第332話人の国へ

 流石に警備は厳重だな。まぁ警戒が空中に向いていないので夜闇に紛れ楽々と人の国へと侵入出来た。この周辺諸国空を飛ぶ手段がない事が分かったのもいい事だ。あれば当然上も警戒するからな。



 空からそれなりに大きい町を探し、降りれそうな所を見つけて降りる。目撃者も無し、今の所順調だ。酒場のような所を探し情報を集めるとしよう。他は開いてないってだけなのだが。幸いここの通貨も持っている。魔族だって元々はここやドワーフの国と交易をしてたんだ。持っていて当然。



 それにしても治安が悪い。俺が人目が無い場所に下りたのだから自業自得とも言えるが、酒場までに5人道端に転がした。一人は永遠に目を覚まさないだろうが、問答無用で刺しに来たのだ、そのくらいの覚悟はできているはずだ。



 酒場は比較的客共々まとも。メシはそこそこ酒はミードかエール。味は個人的には下である。酔っ払い相手に色々聞くのは手間ではあったが酒の一杯も奢れば上機嫌でペラペラと話してくれる。目的にあいそうな売買組合なるドストレートな名前の場所まで教えてくれた。




 酔っ払いの相手も疲れたのでカウンターに向い店主にミードを頼み宿について聞くことにした。



「このへんでまともで防犯面が良い宿を知らないか?」



「身なりからして商人か使用人様で?」



「商人だな。多少高くても構わないんだが」



 店主は少し考え込み。



「そうですね貴方に一番良いのは組合の経営する宿でしょう。女神像の目の前なので分かりやすくもあるでしょう、それに彼らは強欲ですが、奪う真似はしませんからね」




「それはありがたい。丁度用事があった所だ」



 ミードを飲み干し、銀貨を差し出す。




「上手いメシといい情報を聞けた。釣はその分だ」



 受け渡してさっさと酒場を出る。変なのがさっきからずっとこちらを見てる。




  悪目立ちしたか。酒場からお客さん御代はまだだよと聞こえる。どうやら察して店主が足止めしてくれているらしい。



 開けた大きな道へ出た。ここまでくれば手を出しにくいだろう。一際大きな宿屋目の前には女神像。実に分かりやすい。



 中に入るとこれまた豪華だ、だが豪華なだけだ、良い物を集めただけで調和が無い。あまりセンスは良くないのだろう。



「とりあえず1泊頼む」



「銀貨2枚になります」




 受付は俺を値踏みするように見てそう言った。あまり良い気分ではないが、銀貨を差し出す。部屋へと案内され、ようやくひと段落だ。



 陣を敷き備えるだけ備えて眠りについた。

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