第323話死す
ようやく婿の候補が見つかった。でも、あまりに焦った結果嫌われてしまった。冷静に考えれば当然よね。でも、彼の言動は私には凄い鮮やかに見えた。行動は烈火の如く、言葉は凍てつくが如く。
彼に対して恐怖を感じたけど、なにかを感じた。多分恋とか愛とは違うと思う、でもこれが何かを確かめたい。だから私はもう一度彼と合う事を願った。幸い協力してくれる人たちが居てくれたお陰でなんとか合う事は出来た。
相変わらず嫌われたまま。ここまで言われたのは生まれて初めてである。子供を連れて来てコレが俺の師だ?馬鹿にするなと考えた時。信じられない圧がその子供から発せられた。
彼が言う事が嘘か本当かなんて分からない。でも、遥か高みにいる人物であるのは確かだと分かったの。
魔力を放出する行為自体非効率の単なる脅し。かなり格下相手なら意識を奪う事くらいは出来るけど、この少年はこの部屋だけでやっている。部屋の外は平穏そのものなはず。
これほどの技量と力を持つのは兄と父くらいのもの。
思考を整理していると、話しがとんでもない事になってきている。どうにも殺し合いが始まりそうな。
「こんな狭い場所でやるのは気が進まねぇ。折角だ、外で派手にやろう」
「弟子ながら良い考えだね。死に場所くらいは選ばせてあげるよ」
どうやら平原地帯で行うみたい。
急に少年に話しかけられた。
「お嬢さん、立会人をお願いするよ。そこの寝てる人起こして守るくらいはできるよね?」
声は優しく可愛らしいけど、実際見た目も可愛い。でも、目が笑っていない。逆らえる気がしない。
言われるがまま場所を移し、少し離れた場所で見てるように言われると、すぐさま始まった。
少年の放った火の玉は回避され、地面に落ちると、地面は溶解し、そこから飛び跳ねた火の塊は彼へ目掛け飛ぶ、彼はまるで空に足場でもあるかのように回避する。
回避した、火は地面へ、そこからはそれが繰り返されていく。
一方少年は肩膝を付き苦しそうにしている。私も体験したが重さが全身を支配するあの謎の魔術を受けているのだろう。
多分この戦いは少年が重さで潰れるのが先か、彼が避けきれず熔けるのが先かそういうものだと思うわ。
でも決着はもう付きそう。あれは避けきれない。彼が高く飛べるのであれば彼の勝ちだっただろうけど、彼は一定以上に高度をあげない。出来ないのだと思う。
そして彼は火に包まれた、結界術式で耐えてはいるけど、時間の問題でしょうね。
結界内部から凄い大きな魔力を感じると、内部から破裂するかのように周囲の火を吹き飛ばした。
だけどそこまでだったの、危機的状況から脱した彼の目の前には剣を振り切る少年の姿。彼の首はするりと落ち、地面に落ちる前に少年に掴み上げられた。
隣のギルドの人たちも呆然と見ているだけだった。
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