第303話女神の報酬

 俺は俺で、お偉方はお偉方で話は終わった。俺の計画は頓挫したがまだ軌道修正できる時点での駄目出しでよかった。散々目立った後だったら厄介極まりない。



 このままさようならとならないのが世の常である。なんでも褒美が出るそうだ。人側はある程度こっそりとやってくれるそうだが、吸血鬼の方はそうはいかないらしい。


 項垂れてる俺を見てルイが追い討ちをかける。



「一国の姫君の奪還と多岐にわたる種族の奴隷の解放。更にここいらで言う所の悪逆国家中枢の掃討。これだけやらかしておいて何も無い訳がないよね? 分かってるからこそあんな計画をしたんだろう」



 そうですとも。これだけやれば国家がやりそうな事は2つ潰すか持ち上げて自身の度量を示すかだ。この場合は後者を選ぶほうがリスクも低いし常識的だ。   



「俺が悪いんだろ?しってるよ。畜生」




「それとね、これは確実にお願いしとくけどギルドに顔を出して、さすがの総長も君無しじゃしんどいみたいだよ」



「なにがあったんだ?」



「まぁ酷い事にはならないよ。ただ、君を見ないと気がすまないそうな」



「意味がわからん」



「来てみれば分かるさ。可愛い子だったし口説くのもいいんじゃない?」



「余計に意味がわからん」



「10日以内にはミルちゃんのお店に顔を出してくれれば一緒に行くよ」



 じゃあねぇと言いたいことだけ言って行ってしまった。本当に毎度毎度、面倒事に巻き込む奴だ。




 身に覚えがある感覚が急に現れる。場所を移したほうが良さそうだ。転移符でこの前の滝周囲へと飛んだ。









「報酬の件と思っていいのか?」俺は何もない方向へ言葉を吐き出す。



「ええ、その件です」



「最悪の仕事だったよ女神様」



「報酬ですね。貴方も納得頂ける力を用意しました。」



「興味深いね。聞こうか」


「神気」


「そいつはありがたい」



「ではこちらに触れてください」女神は手を伸ばす。



 その姿を見た俺が一番に感じたのが悪意だ。前世でも散々触れてきたソレだ、表面ばかりで裏は汚いソレだ。俺は大きく息を吸うと。





「賽の神。お前に問いたい、出て来い」俺が出せる最大の声量で叫ぶように言う。するとどうだろう。女神は慌てた素振りして次の瞬間。












 俺は見知らぬ風景の中にいた。


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