第299話まずは親から

 王子とは次の顔合わせで会う約束をして別れた。明日にでもリュートが戻ってくるはずだからだ。いい加減こっちはケリをつけるまでは行かなくても、保留に近い状況、あるいは白紙にもっていく必要がある。




 俺の計画をこのまま進めればあの少女を傷つける事になる。できるだけそれは避けたい。



 まずは真意を聞きに行く所からだ。俺は転移符でクレイドル付近にルイが仕掛けたポイントに転移する。



 村長に会うのは簡単だった。来る事自体を予想してたのかもしれない。




「アンタが俺の所に娘を置いたのは最終的にリュートとの関係を進めさせる為だな?」



「いきなり来て本題とは随分焦ってるじゃないか?娘に不満でもあるのかい?」



「よく出来た娘さんだよ少し見ないだけで随分強かになっていたがな。で?俺への返答は?」




「どちらでもいいのさ。リュートは忠義と恋の狭間で揺れているし娘も似た感情があるだろう。君に対しては憧れと恋心、恋の方は勘違いかも知れないが本物にだってなりうるさ」




「そこそこ一緒に過ごしたが、嫁もいないのに娘が出来た気分だったよ。村長の答えは聞けた。では次だ。もし、仮に俺を選んだとしよう。そしたら俺はこう告げるだろう」


「興味深いね、聞こうか」




「俺と袂を別つ事は許されないし、君は二度と他の人間に会えなくなる。その覚悟はあるか?こう告げる」




「精霊様の領域かい? 前に会った時は感じなかったけど、今は確かに精霊様の寵愛の様な物を感じるよ。守護者の様な立場なんだろうね君は。確かに娘と今生の別れは容認できない」



「それに今は良い。しかし、俺は多くの危険と共にある。精霊の近くならどうとでもなるが、普通に暮らしていれば守りきれない」




「娘への手紙を書くよ。君には迷惑をかけたね」



「楽しかったのは事実だ。娘が欲しいと思えるくらいにね」




「聞きにくい事だけど。君は自分の伴侶を持つつもりが無いのかい?役目を考えると絶望的に思えるんだ」




 気付きたく無かった。よくよく考えればかなり厳しい。




「嫁が欲しいのは確かなんだがな。縁なんてものは無い所には無いのさ」


「そうか」



 村長との話はそこで終わり、俺は買い付けにでた。シロップとカカオもどきはここでしか今の所買えないからな。


 親はこれで良し。次は娘だ。

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