第282話手紙
そろそろ認めなければならない事がある。俺はこの世界についてから見た目が一切変化していない。成長、あるいは老化と言っても良い。人間であれば個人差はあれど数年あれば多少は変わる。
だが俺には無い。鑑定先生に聞こうにもどう聞いて良い物か。こんな事に気付かされたのはある手紙のせいだ。クレイドルのエルフの少女、彼女からの手紙だ。内容は簡単に言えば会いたいの一言だ。それだけであれば、まぁ用があれば寄るか程度だったんだが。いや、今でもその程度だが。
問題は一文に私も成人したとあった事だ。人間とエルフはある一定までは成長速度は大差ない。詳しくは第二次性長期までだ。それ以降はエルフが圧倒的に成長が遅い。何が言いたいかと言えばだ。あの時あの少女は一桁もしくは二桁になったばかりと言った見た目だった。
見た目が実年齢より幼かった可能性はあるが、5年近い歳月はすぎているのではないだろうか?今までの文化圏で年越しの行事は見てない事とあちらこちらを飛びまわりすぎて、完全に季節感が狂っているのも原因だろう。なによりもあまりに暇が無かった。
成長に関してはルイには聞いて見るが、あれ自体が年齢どころか性別すら不明に見える奴だし。シャライはエルフだから比較は出来ない。他の異界人なんて会いたくも無いし。ここは一旦保留だな。
この手紙なのだがギルド経由で来ている。渡しに来た青年は凄い形相で「絶対に返事をしろよ」と言ってきた。
そうだなとりあえず返事を書くとしよう。内容は当たり障りの無い内容とエルフの里で武を学んでいるので会いに行くのは少し時間が掛かる事を書いておけば良いだろう。成長の件は今考えても答えはでない。手紙は書いてギルドにいるであろう青年に渡せば問題ない。
であれば俺はいつも通り鍛錬か作業に戻れば良い。
この時ダイスは予想すらしなかった。名前すら聞いていない少女の行動力を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます