第281話困惑するもう一人の新王

 あれから結構な時間が過ぎた。ハジメを旗印とした大きな開拓だ。砦とそこへ続く道はあれど、他は手付かずの土地だ。俺が買い付けたのは、海に隣接した土地だ。メリットは立地としては最上の部類に入る事だろう。




 デメリットは人類の生活圏からかなり離れている事。道の開拓だけでもどれだけの時間が掛かるか分からない。ハイド卿。いや。今では王か。この指定には困惑したそうだ。こんな場所を本当に開拓するのかと。



 お陰でかなり安い値段で買い取る事が出来た。一応所属はギルドを含む有力者の自由都市を謡うつもりだ。



 今はひたすらギルドの職員、職人、戦争で職を失った人等など色々な人間に金をばら撒きながら、道を作っている。



 街というか都市なのだがある程度の基礎はもう出来ている。5ヶ月あって練成師で尚且つ知識の補助まであればなんとかなるもんだ。やったといっても整地、治水、下水道及び水道くらいだ。



 後は脅威になりそうな魔物の駆除。副産物という訳ではないが。風の精霊の庇護下にあった妖精の保護が出来た。これで風の精霊も安心できるであろう。当然だが楽園へと招待した。今頃は仲良く飛びまわってる頃だろう。



 当然修練も忘れてはいない。最近ようやく修練中全てに於いて意識がある状態で終える事が出来るようになった所だ。残念だがここ数日は魔族の領域がきなくさいと師が出向いているので。自主修練ばかりであるが。歌の方はまぁまずまず。正直スタートラインに立てるのは何時になるか想像も付かない。



 忙しいが、それでも休みを自分で決め確実に取れている。こういうのを充実と言うのかね?







 場所は元聖都跡。ハイドは一人考え込んでいた。まだまだ仮設と言った場所ではあるが機能面では問題はない。無駄に格式ばった物がない分こちらの方が機能的とも言えるだろう。



「どうした?ハイド王、ギルド関連か?」




 そう部屋に入りながらそういうのは、私の腹心にして戦略の要でもあるルドガーだ。



「ああ、どうしてもあのハジメと言う男の行動が解せない。アレではこちらが施しを受けている様な物だ」



 ひとしきり周りを確認すると「実際そうなんじゃないかねぇ。こっちで食っていけない連中を率先して使ってくれている。更に言うなら資材も買い上げてくれている。ギルドとしてはこっちに潰れて貰うのも困るって事でしょうよ」




「ああ、それだけならそうだろう。では何故あのような場所を? 聞けばハジメ一人の資金で買取、道も自費だと言う。ギルドとは動きが違う。金こそ落とすが、それにしても無駄が多すぎるのだ」




「それを言われると気味が悪いな。しかし、分からないものは考えてもしょうがない。一応開拓組にはこちらの手の物も紛れ込ませて情報を集めてはいるが。本当にただただ道を作ってるだけで他に動きが無いときている」



「引き続き情報収集を頼む」


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