第246話死者の軍勢
夜、周囲は静寂に染まり、皆寝静まる時ソレは突如として鳴り出した。鐘だ。それも時を知らせる物では無く。危険を知らせる鐘だ。
当然使者である俺は呼び出される。
「使者殿、夜分に済まない。しかし、緊急の事態だ。友よ、説明を頼む」
「単刀直入に言おう。魂の同郷者よ。力を貸せ、相手も同類、元の世界で言う所のネクロマンシー。神に仕える者が死体弄りの能力とはなんとも皮肉だが、今回の水害の生き残りだろう」
「魂の同郷者については分かりませんが。敵の数接近してきたルートが掴めません。内通あるいは情報の漏れ、警備の穴があったのでしょう。可能な限り力は貸しますよ」
「内通も不備も無い。奴の能力だ。奴は自分自身がいる所にスペースさえ確保できれば動く死体を呼び出せる。ほぼ単独での行動。多くてもこれだけの接近を悟れない時点で小隊程度だ」
「死体の、いや敵の数は」
「今回の死者ほぼ全てと見て間違いないだろう。だからこそ幾分かの猶予がある。奴等は力こそ恐ろしく強いが代わりに鈍足だ。這う程度の速度。これを踏まえてせめて民が逃げる時間を稼ぎたい」
数が多い。だがここでこいつらが滅んでしまっては意味が無い。
「では卿は監視をしつつ、私の策がダメだった時の為の準備と遠目での把握を、私はアテがあるので土に返す手伝いでもしましょうかね」
これは仕方ない。やらねば詰む、巨壁への隠蔽も近い未来ばれるだろう。それでもやらざるを得無い。ルイの関係者として王と変装して会い。巨壁同様の姿で来るべきだった。
後の祭りって奴だ。我ながら浅はかだったな。
「お手並み拝見と行きましょう。民には距離を取って貰い、我々部隊はぎりぎりに布陣します」
俺は席を立ち外へと出て行く。死体のうごめく大軍勢の元へと。
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