第244話懸念
城壁の内側非常に不本意ではあるが私は、気に入らない男の指示で、民を宥めていた。奴は信仰心が薄いきらいがありいつも飄々として、我々上位騎士に礼を欠く。しかし、その能力と民や仲間の人命を優先するという点に限り評価できる。だからこそ不本意だが従っている。
と、言うのにだ。あろう事か奴は逃走したらしい。民を連れて、まぁアレを見て逃げたくなる気持ちも理解出来なくも無い。
空には巨大な滝、まさに天からの罰。アレでは城は持つまい。あの男は逃げたのでは無く見限ったのだろうな。今思えば奴らしい判断なのやもしれん。
それでも私は逃げれない。自身の信仰は否定できないからな。せめて、可能な限り城壁の上に避難させるとしよう。
半刻も経たないうちに、下は水没。各自屋根の上や高いところに避難している。いずれ来る終わりに気付いているのは私だろうか。これから起こるであろう大惨事に私はただ震えるしかなかった。壁の上にいる私はまだ見込みがあるだろうが、それでもあやうい。残念だが他は絶望的だ。
そう、決壊だ。門が水圧に耐え切れず吹き飛んだ。濁流と共に全てが洗い流されて行く。神の宣言どおりとでも言わんばかりに。
私達はただただ、その光景を唖然と見ているしかなかった。今思えば一箇所門が開いていたからこそこの程度で済んだのかもしれない。
最後まで自分勝手に結果だけ出す忌々しい男だ。
都市としての機能は完全に消失、死者は1万と2千人。城内にいた人間は全滅。残ったのは運が良い人間と城壁だけだった。
さて、このくだらない戦?いやテロと言った方が正しいのかな?それもほぼカタがついた。後はどう持っていくかだ。一応統治者になれそうな者は選定してある。使える物全て使ってサーチしたんだこれ以上は望むだけ難しい。
あと彼の親友が非常に気になる。国を即見限り民を少しでも逃がす。そのあり方は嫌いではない。気になるのは彼の軍事での功績だ。一人指揮官とは思えない。常に最高の一手を繰り出す、と言えば凄まじい軍師なのだが、その思考に違和感を感じた。
名軍師なぞ元の世界の歴史の中に沢山いた。孔明だとかハンニバルだとかが知名度的には代表だろうか?俺自身詳しくは無いが、知識だけならスキルで取り出せる。
違和感と言うのはいくら名軍師でも思考にパターンと言う物がある。急に変則的な事をしても真逆の事をする事は無い。彼の功績を調べるとまるでその場で最も適した軍師が指揮しているような錯覚すら感じる。
結論を言うと疑っている、同類である可能性を。行動だけ見れば敵対までは行かないだろうが、懸念の一つではある。今からハイド卿と会う時に彼も来るらしいが、どうなる事やら。
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