第243話遭遇

 あれからどれだけ歩いただろう。行軍のペースは遅い。それにとっくに敵さんに攻撃されるか、それでなくても降伏勧告の伝令の一人は来て良さそうなものだ。



「閣下、小規模の武装集団がこちらに向かってきています。南の方角です」



 ようやく来たか。こちらの食料もほぼ尽きた、敵だとしてもありがたい。



「盾を持て、武器を突き出す真似はしてくれるなよ? 俺が先頭を行く、これは戦闘ではなく交渉の場と思え」



 俺自ら盾を持ち、剣は鞘の中。その状態で自然な速さで南に歩いていく。向こうもある程度意図が読めたのかもしれない。ペースを落とし、武器を納めこちらに来てくれている。



「我々は君たちが言う所の反逆軍だ。まず、貴殿の名を聞こう」



「ルドガー・シュッタトだ」



 名前を出した途端空気が和らいだ。さっきまで武器こそ出してないものの、何かあればすぐ攻撃、あるいは反転して逃走しようと言う構えが見て取れる。現に後方に3人待機している事からも間違いないはずだ。



 しかし、何故俺の名前を出した途端に。警戒されるならまだしも警戒を緩める等。



「ハイド様の読み通りだったな。閣下、お尋ねしますが。教国から脱退したとみてよろしいでしょうか?」



 なるほど、ハイドの奴か。あいつなら仕方ない、俺の思想をある程度理解しているし、共感もしてくれる友だからな。



「戻った所で逃亡兵として斬首だからな。あの時点で見限ったよあんな国」



 元々肌に合うわけが無いのだ。



「ハイド様がお会いしたいとの事です。その場合後ろの方々の食料支援等はお任せ下さい」


 これはありがたい。このまま町を目指した所で食料が手に入るとは思ってなかった。だからこそ森を目指した訳だが完全に読まれていたらしい。


 あいつには感謝しかないな。


 伝令は後方にサインを出すと待機していた人間は南へ走り出した。我々も行くとしようか。



(ルイ聞こえているか?)



(もちろんだとも)いつもの様に返事をする。



(お前、あの水量は無いだろ?今頃水源が一気に減ってあそこは阿鼻叫喚じゃないのか?)



(ダイス君、そこまで愚かじゃないよ。数箇所から取れば一箇所の負担なんて大した事はないよ。巨壁の国の復興に比べれば微々たる物さ)



(総量はそうでもあれだけの量を一気にやれば問題がでるだろうが)俺はルイに怒鳴るように言う。




(勿論その辺も考慮してるよ。それだけの為にため池を幾つも準備したからね。君のその配慮は美徳だけど、今回は杞憂だよ)



(そうか、すまん。あの光景を見せられて冷静さを欠いていたようだ)


(そうそう、そっちの新しい君主はダイスが見立てたんだろう?)



(まぁな俺は侵略がしたい訳じゃないからな。馬鹿を潰したとしてそいつが上ならそれに変わるまともな奴が必要だ)



(ダイス君が選ぶならある程度信頼してるよ。名前を聞いて良いかな?)



(ハイド。ハイド・シュバルトだ。この国には珍しい信仰なんぞより現実を見て、民をある程度生活水準を上げれば自分に返ってくる。そんな考え方の変わり者だ)



(そりゃ珍しい。こっちの戦闘は終わったよ)



(そいつは良かった。俺はこれから、ハイドとこの国の軍部の元頭との会談に行く。互いにさっさと終わらせたいものだな)



(同感だよ)


 

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