第217話解放
この屋敷は好きにして良いようだ。何故この時間が惜しい時にこんな事を聞いたか。それは、足元を固める為だ。
前評判は二人の奴隷のお陰で既にある。では何をするか。二人を最大活用できる場と俺の拠点としての場を固める事だ。具体的には浴場の設営。それから俺以外入れない部屋の作成。
金はあるが、ここは金食い虫だ。ある程度ここで稼ぐ事も視野に入れたい。やる事は高級宿だ。部屋は5つくらいしか提供できない分、質と料金で採算を取るしかないだろう。
部屋の方は簡単だ。入れないとは言ったが、転移符を隠すための部屋だ。広さはいらない。よって、練成師でどうとでもなる。執務室の壁に開封可能なギミックと転移符を設置するだけだ。
問題は浴場だ。これは既にあるといえばある。しかし、小さい。一般家庭としてはでかいが、高級な宿として使うには不十分である。いっそ離れという形で作るのが良いかもしれないな。馬鹿でかい庭必要ないし。この辺は伯爵に相談したほうがいいだろう。
部屋の方は1分と掛からずに済んだ。エステの方は取り合えず始めよう。リーシャさんの紹介状を持った人間のみという限定的な物になるが今はそれで良いだろう。正直ここでやる気は無かったが。ここまで伯爵と縁が出来てしまった。今更この程度の手札は見せて構わない。
使用人達にはその事を伝えると。一部から私も利用可能でしょうかと問われた。女性は美に貪欲だなとつくづく思う。
なので予約が少ない時に限り一日4人まで順番になら許可をした。この順番には希望しない者も含んでいる。無論金は取らない。聞いた使用人は喜んだが、これはただの社員サービスでは無い。他との違いを明確にする為だ。
美容関連の施設でもあるのだ。当然であろう。それに二人の経験にもなる。
さて、次は奴隷の処遇を決めたい。俺は二人を執務室に呼んだ。
「さて、マイン、リズ。お前等は今どれだけの債務、あるいは束縛期間がある?」知ってはいるが確認だ。
「金貨1500枚あるいは25年の労働だね。リズも同じさ」
1500枚でこの期間はかなり短いがこれは彼女達の有能さを表している。
「そこで訪ねたい。お前達は払い終えたらどうする?」
「わ、私はこの仕事を続けたいです」
「私も同じだよ。それ以上にアンタには借りがあるからね。この傷を治すには相当な額を積まなきゃいけないはずだからね。それに今の仕事は楽しいよ」
「それは良かった。ではこいつにサインしてくれ。奴隷ってだけで面倒な事になりそうだからな。これに不満があるなら言ってくれ」
契約書の内容は。無利子での貸付及び自身の買戻し。それから雇用条件だ。
二人は契約書をマジマジと見る。
「いいのかい?これはアンタが損するんじゃないのかい?」
「金より長く真面目に働く従業員の方が必要だ。本当に良い職場って奴は従業員にも良い場所なんだよ。なんつったっけ?社外顧客と社内顧客ってのか。客も従業員も大切にしろってこった」
引き抜きのしにくい人材ってのもあるがな。
「本当アンタは良い男だねぇ。よろしく頼むよ」
「その言葉使いで客に接してはくれるなよ?俺が言っても説得力は無いかも知れないがな」
それから伯爵の下へ行き浴場の件を相談すると「面白そうじゃないか。僕もたまにお邪魔して良いなら良い職人を紹介するよ」
と言われたので、お願いする事にした。
これで足場の確保はある程度できた。明日は敵地へ向かうとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます