第218話夜の散歩(長距離)

 月明かりも無い曇り。この世界の文明レベルでは闇と言って過言ではない。それでも今の俺にはありがたい。俺は今。辺境伯領の外郭の砦前にいる。なに、前もやった手だ。強いて違いを挙げるとするなら、高度だろうか。



 伯爵領の砦も向こうの砦も探知型の魔術が仕込まれている。だが、あくまで想定は普通の人間を想定している。向こうの場合は吸血鬼も想定してるせいで多少高い位置まであるが。それだけである。その上を通るだけ。ちょっとどこぞの電波塔くらいまであがるだけだ。



 とりあえずは東へ進む。一時間半くらい進むと雲が晴れ、月明かりが出てきた。上では目立ちかねないので降りる事にした。そこで見たのはイヤな物だった。畑だ、ケシの。まだ悪とはいえないが限りなく黒なんだろうな。こんな森のど真ん中で栽培してるのだから。



 ここは森だよな?て事はだ。これは畑ではなくあくまで自然と定義しても良いよな?そうに違いない。では全て頂こう。毒とは薬に転じる物が多い。ケシもその一つ。使う事は無いと思いたいが鎮痛剤を生成するのもありだろう。生成が出来なければ処分する。



 こんな所で収穫作業するとは思わなかった。とりあえずは刈り終えたので残りは燃やすとしよう。ただ燃やすのではなく燃やして、置換転移で場所を変える。向こうは荒地のど真ん中、火事にはならんだろう。土は良質だろうし丁度良い。



 行商人として情報収集しようと思うが。最短の村は止めた方が良いだろう。幸い朝まではまだ時間がある。森を突っ切って先を目指そう。



 4時間程度移動しただろうか。見られた形跡は無い。距離としては250キロ程度稼いだかな。山も一つ越えたし疑われる事はないだろう。商会で貰った地図でなら確かこの辺りで大きめな都市があるはずなのだが。



 30分ほど進むと見えて来た。名前はライーナ。教国とバルン王国の国境線上に位置する交易都市。俺にとっては敵になる。



 さてどう入り込もうかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る