第215話会談

 上位貴族だとは思ってたがまさかの王。さてどうしたものか。王ってのは暇じゃない。まぁ例外はあるが。そういう国は大体碌でもない。しかし、今見た範囲では治世が上手く行ってると見える。まぁまだ一部しか見てないから断言は出来ないがな。



「王自ら来るとは光栄だな。暇も無いだろうに」最早この縁は危うい。上手く行きかけてたし、きっちり繋いだと思うだけに残念だが。この場を乗り越えたら撤退を考えたほうが良いな。



 王は何か、確信めいた事があるかのように話し出した。



「所でダイスよ、賽の字とでも呼ばせてもらおうかな。日本と言う国を知っておるか?」



 俺は身構えた。無意識だったのかもしれないし、そうでないかもしれない。武器を取るギリギリの所だ。



 当然他の連中も構える。王をいつでも守れるように。


「そう、警戒するでない。確かに火の字が言う通りだな。警戒心が強いな。だが案ずるな。この知識は我を助けて死んだ、その国の若者から聞いた知識だ。この国は忌むべき国なのか?」



「知識があるなら何故聞いた?意図が分からない」



「それは我が目指すに足る国だからだ。些か問題もあるがそこを修正さえしてしまえば理想であろう?」



「日本はかなり問題の多い国ではあるが・・・理想とは程遠いだろうに」



「そうなのか?知る限りでは素晴しい国ではないか?」



「王も貴族も不要な国だぞ。不利益でしかないだろう?」



「そうであったな。だがそれではこの国は消えてしまう。周囲が周囲だからな。だが見習う事はいくらでもある。そこでどうだろう?賽の字よ、我に仕える気は無いか?」



「お断りする」



「待遇はいいぞ。欲しいなら爵位だってくれてやろう。それだけの価値があるし、恩もある」



「俺は商人。出せる日本の情報は売っても良い。だが仕えることは出来ない」



「そうか。それは残念だ。日本の話は今度買わせて貰おう。ついでに教えて貰ったマンガだったかの?の続きを知っていれば是非売ってくれ。気になって仕方が無いのだ」



 王と俺以外は静かだ。多分俺のせいだろうが。余りの無礼ぶりに冷や汗ダラダラなんだろうよ。



「では賽の字。商売の話をしよう。それなら問題あるまい?」



「それなら俺の仕事だ」



 何故こんな態度か。この縁は9割諦めたからだ。いつ襲い掛かって来ても不思議ではない状況だ。無礼打ちって奴さ。



「戦に加勢してみぬか?無論加勢の仕方はそれぞれだし。商人としてで構わん」



「俺は行商人。お得意様になるかもしれない人に喧嘩を売るわけ無いだろう?」



「そこは安心しろ。それは無い。かの国では認められた商人以外とは取引していない。羽振りが良いよそ者が来ようものなら異端者とか適当な事を抜かして、異端審問にかけてお終いだ」



「教国と対立してるのか?」



「間接的にな。隣国などあくまで傀儡だ」



 何処かで見たなこの構図。



「報酬は?」



「そうよなぁ。何が欲しい?ついでに聞くが何故急に乗り気になったのだ?」



「簡単な話だ。俺の住んでいる大陸から最近叩き出された宗教だからな。正しくないか。正しくは信仰はそのままで、教国関連の教徒を叩き出したんだよ」



「詳しく聞きたい。いくらで。いや、何を出せばその詳しい情報は買えるだろうか」



 さっきまでの余裕のある表情ではなく、凄みのある表情で聞いてきた。これが本来の姿なのだろう。切ろうと思った縁ではあるがこの縁は良縁なのかもしれない。もう少し様子を見るとしよう。

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