第214話知らないおっさん

 リシャー商会を訪ねる。従業員も俺の顔を覚えたらしくそのまま通される。だが少し商会の雰囲気が違う。いつもより張り詰めている。ピリピリしている。そう表現しようか、原因は妙に屈強そうな武装済みの男達のせいだろうか?



 出直した方が良いかと通り掛かった従業員に尋ねると「レイウス会頭は心待ちにしておられました」と言う。この男達は護衛で間違いないだろう。しかし、数が多い。いくらなんでも多すぎる。



 その辺を聞き出したかったがさっきの従業員はもう行ってしまった。仕方ない、本人に聞くとしよう。


 応接間には5人の男がいた。一人は当然レイウス、もう一人はガル。もう一人は伯爵。いきなりは会いたくない相手だが、まぁいいだろう。



 次は辺境伯の保護者の方だ。そしてその中央で一番存在感がある美形のオッサン。どう見ても偉そうというか構図を見るだけでも偉いのだろう。



「これはどういう集まりでしょうか?レイウスさん」



 レイウスの変わりに美形のオッサンが口を開く。


「なに、警戒する事は無い。ただ、皆君のファンなんだよ」



 野郎ばっかりじゃねぇか冗談じゃねぇ。



「身分が高い方からそう言われましても困りますね。私はただの商人に過ぎません」



「良い、普段通りに話すが良い。主も窮屈であろう?」



 もね。なら遠慮はしない「助かる。肩がこってしょうがないんだ。それで?なんとなく予想は付くがどちらさまで?」


「なに、ただの王さ」



 ・・・・・・・・・ハッ?


 何故このタイミングで?警戒は元々してたが一気に研ぎ澄ます。例えこの場全てが敵であっても良いくらいには。



「まぁ落ち着けダイス殿。王は礼を言いに来ただけだ」レイウスはそう告げる。


「そうそう、ついでに、噂の酒を楽しんだり。政務の書類仕事を文官に押し付けたり。息抜きをしてるだけさ」と伯爵。


「更に言うなら、ダイス殿武勇を聞いて楽しんだりもしてますな」と辺境伯。



 レイウスはともかく他の3人は仲が良い様だ。



「まずは礼を言わせて貰おう。お主の酒のお陰で娘の傷が癒えた」



「それは伯爵に言うべきだ。俺は商いを行っただけ」



「なに、勝手に感謝しておるだけだよ。火の字から聞いた話も愉快じゃったしな。それにアレだけの霊薬を別大陸からこの大陸へ持ってきてくれたそれだけでも感謝に値する」


「面倒に巻き込まれないなら何でも良いさ。厄介事は嫌いでね」



 こうして王を含む5人との談笑は続いた。内心ヒヤヒヤのダイスであった。


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