第201話精霊を楽園へ

 帰り道は順調だった。辺境伯様のお陰だ。盗賊も魔物も八つ当たりといわんばかりに瞬殺して行っているからだ。



 リシャー商会について俺は挨拶もそこそこに精霊との対面に向かった。あまり先送りにしたくない案件だからだ。



 人払いを頼み、檻の前に着くと俺は出来る限り落ち着いた声で話す。少しでも話しやすい様に。



「こんばんは。俺はダイス。君を買った人間だ。君と話しがしたい」




「アンタは僕を買った。答えても良い事なら答える・・・ん?」精霊は鼻をヒクヒクさせ何かを嗅いでいる。



「何か匂うのかな?」



「アンタ何者だ?ドラゴンに妖精、他の精霊の匂いまでする。しかも全部祝福されてる」



「それを答える前に聞きたい。精霊の君はこれからどうしたい?元の土地に帰るか。俺の土地に来るか」



「僕がいた場所はもう無い。人間に奪われた。なんとか妖精達は逃がしたけど、お陰で捕まったのさ」



 なるほど風の精霊がそう簡単に捕まる訳が無い。そういう事情か。



「では俺の土地に来るか?人間に襲われる事は無いと思う。そういえば他に精霊がいるが、精霊は共存は可能か?無理なら場所を離す必要もあるな」




「そこは人間と大差ない。気に入らない奴なら嫌だし、良い奴なら共にいても良い」



 問題は無いって事ね。



「どちらにしろ見てもらった方が早いか。俺の手に触れてくれ」





 そして楽園へと転移符で飛んだ。



「ようこそ我が領地へ。歓迎しよう」少し芝居染みてるが、ちょっと言ってみたかったのだ。妙な恥ずかしさが俺を襲うが、無視だ無視。



「僕はここに住んでいいのか?」



「この島の中ならある程度好きに住んで構わない。他の精霊や妖精あとは俺含め、人間が三人しかいない土地だが。俺が知る限り一番安全な土地だ。理由はこの島を良く見れば分かるだろう」



「ここは僕にとって楽園のような場所だよ。だからこそ僕は気になる。人間が利益もなくこんな事をするわけが無い。違う?」



「違わないさ。君にはこの島の防衛。万が一に島の外から近づく者があればその風で遠ざけて欲しい。撃ち落せるなら尚良い」



「どういう事?」精霊はますます分からないと言った感じだ。



「それは自分の目でこの島を良く見れば理解できる。楽しみにしてると良い。俺はあの屋敷に戻るから自由に見てみると良い」



 そうして俺はリシャー商会へ戻る。おっと元々いる精霊のヘスにも一言、言っておかなくては。



 ああ、そう。で済まされて拍子抜けだが。楽だったので良しとしよう。



 さてこれからは、面倒な80歳のお子様の相手か・・・嫌になる。

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