第200話そんな事より帰りたい
「それで、何故俺達を襲ったのでしょう?アルド辺境伯殿」
「戯れよ。貴方達はあの暴漢と私を見て逃げ出した。しかも、そこのガルでしたか?が救おうとするのを止めてまで。貴方でもガルでもあの暴漢くらい片手まで屠る力があったはず。それでも逃げ出した。そこで思ったの貴方は暴漢を避けたのではなく。私を避けたんだとね」
疲れきった表情でため息を混ぜながら少女は言う。観念した所か?
「あの状態で、魔力を放出してた訳でもない私を、正確に認識できる事自体が優秀な証拠。だから私は貴方に興味を持った。その後は試して、雇いたかったというのが、理由よ。証拠にあのガルという青年は大した怪我は無いでしょ?殺し合いなんてする気は全くなかったの」
「迷惑極まりないですね」
「土地柄少しでも有能な武官は欲しいのよ。賠償が済んだら、私の下に来ない?なんなら旦那様にしても良いわよ。私より強い男なんて中々お目にかかれないし。子供が欲しいわ」
「お子様がくだらない事を言うな。拾った命を捨てたいのか?」
気付けばノンタイムで罵倒していた。まぁ可愛らしいよ。しかしお子様の可愛らしいは俺の中で小動物が可愛いのと同じなのだ。それに欲情とか恋愛とか無理だし、不愉快だ。
「歳ならもう80を越している」
ロリコンのみなさん。朗報です合法ロリがいますよ。俺はいらないので誰か引き取って。
「老人趣味も俺には無い」
「老・・・人・・・」
少女は膝を付き項垂れる。若いと思ってる女性には効くワードだったのだろう。
「おいダイス。あまり女性をからかうな。それとありがとう踏みとどまってくれて」
俺一人であれば間違いなくこの少女は死んでいたであろう。何故殺さなかったか。それは縁を切りたくなかったからだ。この世界で味方は非常に少ない。上辺だけならいくらでもいるが。ガルもその一人かもしれない。だが、味方になる可能性はある。
無論期待はずれな可能性は十分にあるが、それでも。ある程度信頼を置ける人間を作るというのは、金や利権に勝る。元の世界では考えもしない事だがこの世界では身にしみて実感した。
もしダメでも良いのだ。その場合は、別の姿で別の商材で、違う場所で商いして足がかりを作り直せば良いのだから。
「ああ、すまんな。いくら辺境伯様であろうとあまりにも不愉快だったからな。次からは気をつけよう」
少女の方からあまりにも・・・不愉快・・・とぼそぼそ聞こえてくる気がした。項垂れている様だから少しそっとしておこう。
ガルが何か言いたそうだが、ため息を付いて「話は戻ってからにしないか?ダイスも預けたままだろ?」
「そうだな。お子様に構うのいい加減煩わしい。さっさと帰るか」
「それはいくらなんでも」ガルは俺に言うがおれは馬に乗り駆け出す。
後ろを見るとガルが付いてきている。しっかりお子様も乗せて。
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