第195話戦闘
切る手札だが。相手は魔術師。ならばアレで行こう。似た技術自体はあるみたいだし。
そして次の日の昼間俺は伯爵と供に彼の領地へと向かった。
「いくらなんでも少なすぎないか?馬車の御者も含めて3人とか」御者はガルである。当然こんな見るからに美味しそうな獲物がいれば食いつくのが当然で既に5度の襲撃を受けている。と言っても農民崩れと言われて納得できるほどの素人。戦術も戦略も無い。数で有利と分かるとすぐに襲ってくる。
「治安が悪いな。領主は何をやってるんだか」
「これは耳が痛い。言い訳をさせて貰えるなら、殆んどの原因が狙いの獲物のせいなんだ。流民が多すぎて対処できてないんだよ」馬車からそんな事が聞こえてきた。
「なんか想像がつきました。災難としか言い様がないですね」
分かってもらって何よりだよ。と中から乾いた声が聞こえてくる。こいつはこいつで苦労してるってこったな。
日も傾きだし人気が無い道に入った時。「多分この辺じゃないかな?」伯爵は馬車を降りて俺の目の前に来る。
「ガルもこっちにおいで」
ガルもこちらに来る。
「伯爵もう一度確認します。獲物は腕に自信がある魔術師、これは間違いないですね?」
「そうだとも。剣の方は見れたものじゃないけどね」
「それだけ分かれば結構です。獲物が確認できた時点で敵味方問わず魔術を阻害します。そのつもりで。ガルも頼む」
「おうよ、任せとけ」
「興味深いね。お手並み拝見と行こうか」
その時は突然来た。「ダイス君一旦下がって」伯爵に言われた通り下がると。道の脇にある林辺りから巨大な火の塊がこちらに向かってくる。
伯爵も風の魔術だろうか?火の塊は大きくなるが、方向性を失いその場で燃え結果、こちらには被害は無かった。
「じゃあ頼むよダイス君」
御所望とあらば仕方ない。詠おう彼の歌で再現できる数少ない歌を。俺は剣を抜き、只ひたすらに詠いながら敵の元へ向かう距離にして20。相手も戸惑いながら出てきている。
歌詞は元の物はかけ離れている。作曲はたしかシューベルトだったか。元の歌詞は日本語で聴くと違和感が尋常じゃなかったような記憶がある。
見つけた。あの油野郎だ。鑑定、虚実の化身で目に付いた物を全てマイナス修正入れていく。逃がさない為だ。
他の賊はどうするかって?
こんなのルイと比べれば子供と大差ない。見た目なら奴が子供ではあるが。
馬に乗るなら馬を射抜いて落馬させる。真っ向から来るなら剣で上回れば良いだけ。元々俺に対峙した時点で人は本領を発揮できない。
魔術が使えないのは俺の仕業なのは敵から見ても分かる。お陰で伯爵への負担は少なくて済みそうだ。
数が多いが受け流しと位置取りで敵の同士討ちを狙いつつ、敵を減らしていく。半時間もすれば残りは無力な魔術師達と獲物だけだ。
詠い続けて喉がきつくなってきたが、あいつらの処分する時間くらいは持ちそうだ。
伯爵自ら馬車の馬を切り離し、騎乗。魔術師を槍で刺し殺していく。後は見ているだけで良さそうだ。
最後に伯爵が命乞いしている油野郎を、豚小屋の豚を見るような目で刺し殺して終わりだ。
俺たち三人は返り血だらけになりながらも事を終えた。
ガルが逃げ出そうとした敵を殲滅してくれたので。目撃者も無い。完璧な仕事ではないだろうか?
自分の姿を見ながら、敵なら殺してもさほど心が動かなくなっている事に、虚しさ感じながら先を目指した。
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