第191話オークション

 この取引で行った事は以上だ。


 一つ金貨の両替。


 二つ互いの大陸の地理情報の交換。



 三つ互いの大陸の特産品や売れそうな物の情報交換。



 大体この三つだ。


 少なくない金貨や他の貨幣を両替した。競りに出てみたいといった所、便宜を図ってくれたといった所だろうか? 当然、自分がこちらの大陸に来たとき動きやすいようにと言う意味合いもあるだろう。



 こうして、競り(オークション)までの間世話になる事なった。



 基本的にレイウスと効率の良い資金の運営方法をイフ方式で論議する毎日だ。俺の敬称も君やさんとふらふらしてたが今では殿扱いだ。認めて頂いたと考えていいのかねぇ?



 それからオークションに向けての準備に何か良い物は扱ってないだろうかと聞かれたので


シャンパングラスを売った。



 ガラス製の物自体無い様で随分と高く買い取ってくれた。



 そうして当日はやって来た。



「紳士淑女のみなさま。我がリシャー商会が主催するオークションへようこそ」



 豪華な室内に立食式の会場。まさに貴族の社交場といった雰囲気だ。



 来客の目も肥えているらしくまずまず合格点と言った感じだ。しかし、ここであのグラスに注がれた酒が配られる。



 流石にこれには度肝を抜かれたらしく、ざわつき。落ち着きを取り戻した所で酒を飲み更にざわつく。



 その様子を見ていたレイウスは満足そうにその光景を眺めていた・・・のは束の間。客は商人や貴族これを欲しいと思うのは当然。レイウスはすぐに質問責めに合う事になる。



 何とか事態を収拾したがレイウスはこの時点で疲れた顔していた、と同時に悪戯が成功した悪餓鬼のようにニヤ付いてもいた。



 オークションはリシャー商会から出される物と事前に他から預かった物。そして飛び込み枠。これはレイウスの審査が通ればという制限がつく。おおよそこの三種類だ。



 俺の酒はリーシャ商会から出される物として扱われる。




 オークションが始まった。最初は魔術付与が付いた剣だ。最終的にこれには金貨1500枚。



 こんな感じで、槍や、防具。ドレスや装飾品。宝石等々。よくもまあこんなに金がある物だと思うくらいに高額で買われていく。




 そして俺の酒の出番である。




「さて皆様、ポーションは当然御存知でしょうが、あれはまずい。ですが今回ここにありますのは高級なポーションより遥かに良い効果を持った果実酒にございます。味はそうですね、先ほど飲んでいただいた果実酒同等とだけ言っておきましょう。効果はある程度の呪いの浄化及び古傷を含む傷の治癒。さぁ金貨100枚から始めさせて頂きます」



 おいおい、この時点でふんだくりすぎじゃないか?



「150」 「200」・・・



 終る頃には800枚?こいつら頭がおかしい。



 落札したのは眼帯で顔面傷だらけの老戦士のような御貴族様だ。なんでもないように、金貨を支払い受け取るとその場で飲んだ。なんとも豪快な御仁だ。



 顔の傷が見る見る消えていく。



「鏡を持て」貴族は従者にそう命じる。従者はすぐに走り去った。周囲は騒然としている。おお、随分とウケが良い事。




 従者が鏡を渡すとそれを覗き込む。そして眼帯を取り。一言「見える」そう呟いた。



 え?失明にも効くのこれ?。ギルドの販売価格が異常とは思っていたがこれは値上げして数を絞るべきかもしれない。




 老貴族はレイウスの所まで向かい。厳つい顔をほころばせ「これで孫に怖がられずにすみそうじゃわい。礼を言うぞ」そういって従者に孫の元に向うぞと言って出て行ってしまった。



「さて最後は私も何かは知りません。詳しくはこの方にお聞きしましょう。レクシア伯爵お願いします」



 周りが一斉に静まり返った。伯爵って事は随分と上の爵位の方なのだろう。



「さて僕が今回ここに足を運んだのには訳がある。面白い物を手に入れたからだ。説明するより見てもらった方が早いだろう」




 そうして従者らしき人が壇上に運び込んだのは檻だ。伯爵が掛けられた布を取り去るとそこにいたのは。




 精霊だ。鑑定でみてもやはり精霊。風を司る精霊のようだ。見るからに疲弊しきっているが。


 なんでだろう。無性にイライラする。理由も分かる、島の精霊や妖精に重ねたのだ。



 俺はこいつを買う。偽善?その通りだ、やらぬよりなんとやらだ。

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