第186話依頼
いつもの様に仕入れと納品を済ませる。数日出発がずれたのだ、補充は出来るだけした状態が好ましい。
「ギルドから依頼?」
「ダイスじゃなきゃならないらしいよ」他人事のように、他人事か。ルイは言う。
「ああ、分かった。俺はギルドに向えば良いのだな?」
「そうじゃないかな。確かにダイスに伝えたよ」
多分面倒事か面倒事だな。限りなく小さな可能性として総長が新しいレシピをせがむという線も・・・ないな。とりあえず行けばわかるだろう。ギルドは俺に誠意を見せている。無論打算はあるだろうが、お互い様だ。それに相互に利益がある。
今ダイスと言う人間にとっては大事な後ろ盾だ。付き合いは必要だよな。
ギルドに入ると色々な人から声を掛けられる。次の新作を期待してるよ的な物とあれは美味かった等が殆んどだが。これはこれで結構なリスクである。
これ事態は何の問題もないのだが、レシピの発案者が俺だと知れるのは問題だ、分かる異世界人には異世界人と公表してるのと同義だからな。
今更それを言っても仕方ない、と割り切り、総長の部屋へと赴く。
総長、ガウ。そして、記憶にある顔がそこにはあった。俺を利用しようとして、最後には武力行使にまで出たが返り討ち合い、挙句にギアスで縛られた愚かな女領主だ。名前は・・・興味が無かったせいか思い出せない。
「ガウ、何故その無能領主様がそこにいる?色々判断に困る事態なのだが?」
「ダイス君にしては辛辣ですねぇ。ですが、一つ間違いがありますよ。ここには領主等いませんよ。彼女は有能な一冒険者ですよ。何処の国にも所属はしてないです」
「貴族を辞めたのか、辞めさせられたが正解か?どうでも良い。で?俺への依頼とは?場合によっては流石に総長の願いでも断るぜ」
気になることがあるとすれば、後ろの幼子だ、この場にいる理由が見当たらない。いや、有ったとして確実に厄介事だ。
「まぁまぁ。依頼内容と報酬。それを聞いてからでも遅くはないだろう? それと今回の依頼はギルドとしては出さない。あくまでダイス君と彼女に依頼を出す場を提供するのが今回のこちらとしての仕事だ」
ますます厄介事じゃねぇか。
「ダイス、今回は可能なら受けてやって欲しい」ガウまで・・・
「聞くだけですよ」俺は泣く泣く折れる事にした。
「ガウェイン部屋を出ますよ。依頼人殿これでギルドとしての依頼は完遂とします。後は貴女次第です」
そういい残し俺とこの女だけを残し部屋を去った。
「じゃあ聞こうか?依頼主さん」
「話を聞いていただき感謝します。私はリセ、ただの冒険者です。こちらの子供はリウス」
「それで?」前の事もあるせいか、気持ちよい会話は出来そうにない。
「依頼はこの子の安全。成人するまで、対価は私の全財産及び私自身です」
私自身ですっていらんわ。状況を把握する鍵はこの子供か。
「まず報酬がアバウトすぎて困ります。次に安全と言いますが、どの程度の安全でしょう?まさか一領主並みの物を言うのではありませんよね?最後にその子供の素性です。それが無くては話にならない」
「はい、報酬ですが。前王から頂いた物全てですのでまだ把握が済んでおりません、私が持ち合わせてる分だけなら金貨8000枚です。私自身は奴隷としてお使い下さい」
やはり意図が・・・嫌な予感はしてるがな。外れて欲しい。
「次の安全ですが一般市民程度の安全があれば構いません。ただこの子が普通に育てば十分です」
これは正直簡単だ。幸い物心つくかどうかって所だ。魔術的なものはなにも無い。
「最後に素性ですが、前王の御子息です」
そうだろうよ、そうだろうともさ。あの甘いおっさんの子か。
今でこそ国がそれどころでは無いだろうから良いが、落ち着いたら次はこの子がってなるだろうな。
「大体分かった。心当たりが無い訳でもない」
「本当ですか」
「ただし」おれは声を遮り。
「その子供に平穏はあれど栄光は無い。広い鳥かごと同じだ。その国から出る事は叶わないそれでもいいか?」
「平穏があるのであればそれで」
「承った」
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