第182話二つ目の欠片

 空中島の自宅。都合上、本家とでも呼ぼうか。まとめた食料、や生活用品等。墓守と妖精の分の物は揃った。これで二月は持つだろう。怖いから一月後には様子を見に来るが。



 豪華さも美しさも特には無い、部屋ではあるが、この世界でこれ程豪華な部屋も少ないだろう。今日はここで休んで明日からの遠征に備えようと思う。思うのだが・・・



「待ちわびたよ。それにしても良い家に住んでるんだね。こっちの拠点より機能的にはいいじゃないか」



 このショタさえいなければ完璧だったんだが。



「勝手に人の家に入るんじゃねぇ~よ。用件はなんだ?」



「欠片が見つかった。また頼みたい」




 道理でここまで来る訳だ。いつもなら念話符で済ますもんな。この欠片ハイリスクハイリターンだ。前回の使用時よりステータス自体は大幅に上がっている。勝算は高いはずだ。




「了解。そいつを寄越しな。丁度休むつもりでもあったし。代わりにもしもの事があればここを頼むぞ」



「万が一処か京に一もなさそうだけどね。それは良いよ、そのくらいはやるさ。様子は見に来るけど目覚めたら念話符で呼んで欲しい」



 ベッドに横になると欠片を見つめる。前回は激痛に襲われたが、今回は意識が飲まれるように離反していくのが分かる。恐らくまた傍観者になるのだろう。




 またあの美人・・・男だったな、そういえば。女なら言う事無しなんだがな、いや体つきはこう・・・ほしいものはあるが。




 今回もダイジェスト形式で彼の異界での生活を見た。感想を言えば納得いかねぇ。やってる事は間接的な世界征服のような物。俺のように安全な土地を手に入れて。技術が全く進んでない世界から、まだ使われてない。有用性がある物資を根こそぎ回収して。空間庫の上位互換の様な物に放り込む。




 後はそれなりに信頼できそうな種族を勧誘し、部下とする。途中趣味に走る一面も有ったような気がするが、こいつは自分の為ってのが無い。共に異世界に来た仲間に情はあるだろうが出さない。




 思い浮かぶ脅威を根こそぎ取り去って。一番の脅威である異界人の侵入を阻止する為対価が厳しい魔術の行使。世界を繋ぐ空間その物を消し去ったって事か。




 こんな欠片がある時点で完璧ではないんだろうな。しかし、気にいらねぇ。救いがない。主だって記憶からいなくなろうが、跡は残ってる事に気付く。そう思うかは知らんが、モヤモヤとしたものが残るのは絶対だ。



 安全だけで誰も救えていない。そんな気がしてならない。




 魔術的には大収穫だが気分は最低だ。そんな気分で俺は目覚めた。

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