第174話懐かしい顔
「まずは無事でなにより。彼達が来る前に一つ提案があるのだが、いいかな?」
「提案はただですよ」
「それもそうだ。ダイス、君の情報を一部開示する。具体的にはパンと酒だ。理由は今回の騒動だね。今回の騒動は表向き君を逆恨みした貴族の暴走という事になっている。そこでだ、このパンと酒の製法を奪おうとして失敗した程度の情報を出せば、より真実味が出て君を守る理由にもなる。どうだろうか?」
この程度なら許容範囲だろう。元々を辿れば俺が店で作ったのが最初だし、調べる者が調べればわかる事だ。
「それでお願いします」
「それが良いだろう」総長は満足そうに頷く。
「残念な知らせだ」
「あまり聞きたくないですね。どのような知らせでしょう?」
「ギアス破りがあった事は知ってるね?」
「はい、その件ならルイに聞きました。それが?」
「少数ではあるが、君の魔術?いや、武器なのかな?それの情報が少数にではあるが広まった。長距離攻撃が可能な雷音の魔術。そして君が武器や防具の製作者として有能である事だ。情報元は抑えたが・・・」
誰が漏らしたか分かった。成る程、道理で。
「女領主のギアスも破られた様だが、そちらは何も話すつもりは無いようだ。その代わり君との和解を求めていたがね」
面倒事がまた。
ん?どうにも外が騒がしい、総長もどうしたのだろうね?と言いつつ武器にてを伸ばしている。音はこちらに近づいている。
部屋のドアは蹴破られ、その先にいたのはまぁ想像はしていたが、懐かしい顔だった。そう、俺の友人の娘にして、元パーティーメンバーのリムだ。
「お前だけは絶対に殺す」
おうおう、怨まれたものだ。当然のごとくステータスを開き全ての値に-10を付与する。スキルレベルは軒並み0レベルも落ちて、オマケに数値にまでマイナス補正、いくら強かろうがこれだけすれば恐れるに足らない。
ガウの娘だし、殺す気にはなれない。軽く押さえつけるとしましょうかね。と、思ったのも束の間。既に総長に押さえ込まれていた。必要もなさそうだしステータスを元に戻す。
ガウがそのタイミングで追いついてきたようだ。状況はこの場が雄弁に語っている。ガウは項垂れ、俺に向き直り「娘が本当にすまない」
子供がやらかした親ってこんな感じよね。被害者は俺だが、同情したくなる。
それまで話していた温和そうな声の総長の声が冷たい声色になり、ガウを攻め立てる。
「ガウェインギルド支部長。これはどういう事だ? 元三流冒険者風情を御せ無いかね? 親族だからといってあまりにも杜撰だ。次は無いと思いたまえ」
捕まった経緯だが、俺の情報を探ろうと、スロートの店を襲おうとしたらしい。しかし、既にギルド関係者に守られていて、あえなく捕縛、20人程度の俺討伐を目的としたメンバーだそうだ。因みにガイは入っていないそうだ。
それどころか、この計画をギルドに漏らしたのは彼だと言う。本人曰く、ダイスは悪事を働いた訳ではない。だから参加しなかったとの事。良くも悪くも脳筋というか真っ直ぐというか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます