第173話用事を済ませよう

 いくら追われている身と言えども、ずっとここで過ごす訳にはいかない。まだこの島には農地も牧地もないのだ。俺の死後を考えれば必要だろうし、それを担う者も必要だ。


 どちらしろ今は食料の確保がまだまだ必要だ。巨壁の国の件で手持ちの食料が少ない。あの大陸でルートを確保するのが今は一番だが。すぐに必要な現在はそうはいかない。一度買出しは必須だ。



 念話符に反応がある。出てみるとルイだった。



(どうした? なにか進展でも?)



(最早口調で落ち付いたんだね)




(まぁいいや。まず君の指名手配だけど。誤報として撤回されたよ。内部犯が見つかって投獄されたみたいだね。実際はギルドの撤退を恐れたって所かな?もう遅いけどね)



(ギルドの対応が早すぎないか?)



(ダイスは自分の価値を認識した方が良い。良いかい?君がもたらす利益と国に派遣する事で得る利益、これは遥かに君が大きい。しかも、国に比べて君はギルドの有能な人材を引き抜いたり、使い潰したりしないだろう? これだけで君はギルドにとって得がたい存在なのさ)



 ルイもその一人なんだろうがな。だが今回の場合どっちが引き抜きか分からないがね。国の目線ならば、自国の有能な民を他国へ持って行かれたようなもんだしな。支部の構成なんて7割程度は地元の人間だろうしな。




(町で買い物がしたいんだが、今降りて大丈夫って事でいいのか?)



(警戒はすべきだけど大丈夫だと思うよ。それにギルドは君をお待ちかねのようだよ。君の安否が気になって仕方ないみたいだ。それに店のみんなも心配と言いながら君が作るお菓子を待っていたよ)



 ミルだな、彼女の子供も見たい気がするし、菓子でも持って行ってみるか。



(アンタも店にいるんだろう?)


(いるよ)



(ギルドに行って、買出しが終ったらそっちに行く。スロートに厨房を借りると伝えといてくれ)



(それは楽しみだね。待ってるよ)



 転移符で拠点に移動した。まぁ大丈夫だと思ってたが、ここは荒らされていない。不動産屋に情報の隠蔽して欲しいと言ったのだ。情報は漏れてないと見て良いだろう。



 念の為帽子を深く被り、顔を隠してギルドへ向う。



 ギルドに付くとこちらに気付いたクリートが凄い勢いでこっちにきた。



「お久しぶりです、ダイスさん。早速ですが、少しよろしいでしょうか?」



「分かってる。面倒事だろう?」



「とりあえず執務室に行ってて貰えますか?私は総長とガウェインさんを呼んできます」



 周りがざわめいている。指名手配の高額賞金首だったのは確かだからな。



 進んでいると、大柄のおっさんが話しかけてきた。



「兄ちゃん災難だったな。だがギルドに着いたからには安心だぜ。撤回されたと言ってもまだ触れが行き届ききってはいないからな。ここなら俺達もいる、安心してくれ」



 どうやら、気に掛けてくれたようだ。素直に感謝しよう。


「ありがとうございます。全く身に覚えが無かったので、恐ろしかったです」



 執務室への呼び出しを受けているので、失礼しますと。話を切り別れる。



 部屋に入ると、総長は既にいた。



「久しぶりだね、ダイス君。ガウェインはもうすぐ来るよ。少しまとうか」


 長くなりそうだ。






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