第172話それぞれのその後

 ギルドとの関係改善を図らなくてはならない。現状外へ行く者はいても同時に来る者がいるお陰で、総数自体は少々減った程度だ。


 明日にでもギルド長に会えるよう連絡はしているが。今から頭が痛い。




 その頃ギルドでは撤退への準備が進んでいた。




「ダイスさんの足取りは掴めましたかい?」ガウェインはいつものように飄々と職員に訪ねる。




「いいえ、彼の所在は未だ全くといって良いほどに掴めておりません」



「準備の方はどうだい?」




「そちらはほぼ完了しております。銀以下の冒険者は既に撤退完了。クレイドルへの交渉で今回の騒動を伝え支部設置のお願いをした所快く受けてくださいました」




「それは上々だね。荷物の搬送も終ったみたいだし。こっちの戦力は一人一人が銀以上。逃げに徹すれば、問題ないでしょう。総長の号令と共にクレイドルへと駆け込みましょう」




 こうしてギルドの撤退は着々と進んで行った。




 身の危険が迫っているダイスだが。彼は暢気していた。情報はルイによってもたらされ、今は自分の領土でまた、怪しげな物を作っている。




 向こうの大陸に行くにしても商材が乏しい。売れる物を作る必要がある。にしてもあの小娘殺しておくべきだった。まさか解呪されるとは。危険があるとすれば買出し時くらいか。




 とりあえず今はこれを完成させる事を優先しよう。需要がどれだけあるか些か不安ではあるが、試作品を現代に持っていけば間違い無く売れるはずだ。




 今思えば理想とは逆の生活を送っている。俺は面白い物が売っている喫茶くらいの店を持って可も無く不可も無くってのが理想だったんだがな。今となっては国家から追われるお尋ね者だ。嫌になるね全く。




 窓の外から覗いている妖精をよそにダイスは黙々と作業していく。

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