第171話苦悩

 王は頭を抱えていた。部下の暴走にだ。あの少女は如何せん苛烈すぎるのだ。有能で私を父のように慕ってくれてる。



 この発端の少年。ダイスだが、アレに手を出すのはダメだ。なぜアヤはあそこまで目の敵にする。私には有能な人間、それこそ部下に欲しい程に。



 それは良い、縁が無かっただけだ。問題なのは私が知らないうちに発行された賞金首騒動と彼を殺すためだけに準備された部隊だ。




 私が気付いた時点で、アヤは地下牢の貴族用の物へ投獄、賞金首もすぐ撤回させたが、額が額だけに拡散が止まらない。誤りである事は王命として拡散させているが・・・間に合えば良いが。



 ギルド長の娘を筆頭とする討伐部隊これも、最早手遅れだ。足取りが掴めない。




 そしてこれは予測と、最近のギルドの仕事を調査しての事だが、ギルドはこの国から撤退するつもりだろう。この事から、ギルドが最近業績の良い理由である、効果が段違いに優れたポーションの出所が彼である事は予想が付く。




 気持ちは重い、それでもこの国の未来の為に・・・



 まずはアヤと話す必要がある。




 部屋・・・いや牢の前には二人の兵、二人に労いの言葉を掛けて、私は中へ入った。



 中へ入るとアヤはただイスに座っていた。私が来るのを待っていたのだろう。



「何故牢にいるかは分かるな?」




「分かりません、私は最善を、この国を脅かす害悪を排除しようとしただけです」何の迷いも無く、自分が正しいと言い放った。




「このままでは私はお前を極刑にしなくてはならない。だが、許そう。その代わりもうアレと関わろうとするな」




「何故、何故王はあの男を庇い立てするのです。あの男は無詠唱で弱体の魔術、予想ですが強化も使えるでしょう。それも軍単位に。これ程危険な男がどこかの国に渡るだけでも危ないのです。一刻も早くしとめるべきです」




「その考えでこの国から冒険者ギルドは撤退を始めている。この意味は分かるな?それになアヤよ、今回の行動は、いや前回もだが完全な背信行為だ。」




「そんな事になるなんて、あの男は脅威になっても国一つ違と秤に掛ける程の価値は無いはずです」




「ポーション、こう言えば分かるか?彼が出所だとすれば、この状況に何の違和感もなかろう? それにエルフの民からも抗議が来ている」




「そんな」


「少し考えれば分かるだろうに、脅威であれど、害を成した事はないのだ。エルフやギルドには莫大な恩を売っている。大義名分がまず無い、はたから見れば私怨で動く器の小さい者にしか見えぬだろうな。アヤよ今回の沙汰を言い渡す。一切の権限を剥奪する。普通の娘としてこの城で生きよ」




 有能な部下を失うのは痛い。だがこれ以上の勝手は流石に庇い立てできない。



 次はギルドか、今から頭痛がしてきた。


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