第164話強い酒で勝負

 結局睡魔に負けて、感知の結界だけ仕掛けて2時間程眠った。これ苦手だから正直使いたくないのだが。こう、びりってくるのだ全身に。


 それから、商材の準備だ。向こうは商人。しかも大物の可能性は高い。有用すぎる物はまずい。ポーションはジョーカーの様な物だな。ならば初手は。蒸留酒が適当だろう。まぁ商談の話になればの話だが。



 そろそろ日が昇って3時間が経つ。呼びにきても良いだろう。



 コンと三回ドアをノックされる。この辺は前の世界と同じなのだろうな。



「どうぞ」



「起きてたか。すまねぇ昨日の連戦でくたびれてたせいで寝坊しちまった。旦那との約束は昼からだから間に合うがな。所でダイスさん。アンタは何を商っているんだい?面白い物なら旦那に話を通しても良いぜ」



 この辺から商人である事を分かってもらえば、この先の活動も楽になるだろう。



「製法はよく分からないのですが面白い酒がありましてね。これは売れると思いかなり纏めて買ってんですよ」



「酒と聞いちゃあ黙ってらんねぇな。どうだい?一壷売ってはくれねぇか?」



「銀貨5枚と値は張りますよ。しかし、美味しければ紹介してくれると言うのであれば銀貨4枚と半分でお売りしましょう」



「高い。しかし、買わずにはいられない」部屋を出るなりドタバタとしてすぐに戻ってきた。



「これで足りるか?」



「確かに。ではこれをどうぞ」壷を一つガルに渡す。瓶を作っても良いのだが。面倒が起きそうなので今は無しだ。



「ほぅ、入れ物から良い物じゃねぇか」



 開けようとするガルを制止して「その酒はかなりキツイです。そうですね、それ1杯飲めば普通の酒を2杯半程飲むのと同等の酔いが来ます」




「ますます興味が湧いたが。旦那に会う前だ。味を確かめる程度にしとくか」木のコップに少し注ぐと一気に飲み込んだ。



「喉に来るねぇこれは。だが美味い。ワインとは全くの別物だな」



「お気に召しましたかね?」



「ああ、気に入ったぜ。そしてアンタは商人だ。それがはっきり分かった。これで安心して旦那と会わせられるってもんだ」



 やはり疑われていたか。商人がアレだけ戦えたら疑いもするか。まぁ良い疑いは晴れた。



 さて大商人様にお目どおりと行きますか。


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