第161話新しい旅路

「結局は休めないんだよな。俺は」一人愚痴りながら、買い付けを行う。妖精達の分の食料及び墓守のぶんである。



 妖精自体そんなに食料を必要とする種族ではないため割合的には嗜好品が多めでだ。なぜこんな事をしているかというと。別大陸への仕入れ及び偵察。符を使えば帰還自体はできるが、無駄な長距離転移を軽減する為、今忙しなく働いてる訳だ。



 後やらなければならない事は・・・



(王よ今大丈夫だろうか?)巨壁の王への連絡である。



(どうされましたか?)



(そちらが落ち着いたら行く手はずだったが。師からの依頼で別大陸へ出向く事になった。申し訳ないがそちらにはいけそうに無い)



(教国を落としたとなれば、警戒は正しいと私も思います。本来我々の大陸の権力者が一丸となってやる事なはずなのですが。お手数をおかけします)



 ある程度巨壁の王も理解しているらしい。



(そういう事だ。それなりの頻度では帰ってくる。その時にそちらには向う)



(お待ちしております)



 本当に最後まで腰が低い王様だこと。念話符を切り、ルイへ念話符を繋げた。



(準備は出来た。座標が設定されている符を寄越すか連れて行ってくれ)



(ダイスの楽園で会おう。符を渡すよ。設置はしたくないから持ち歩いてるんだよね)



 最早待ち合わせ場所となりつつある。島の中心部、珍しくルイの方が先に着いていた。



「先に来るとは珍しい。明日は銃弾でも降るのかな?」




「犯人は確実に君だねそれは。ちょっと困った事になってね。忙しいんだ。手早く済ますために来ただけさ。ついでに休憩の意味合いもあるけどね」




「困った事?」いくらでも問題はあるだろうが困った事となるとあまり想像できない。ルイじゃなければ当然なのだが。




「意外かい?君でも困ると思うよ? 代表者、あるいは王の選出。そこを中心とした多国会議への道筋そこまでを作る必要がある」




「王でも作るか? 選定の剣でも抜かせる出来レースでもして見るか?」



「縁起が悪すぎるだろそれは。それに淫魔の真似事とか御免だよ」



「レイナにその歳で手を出した時点で、十分なんだよなぁ」




「ダイス、君実は怒ってるだろう?悪かったよ、面倒にばかり巻き込んで。後精神がある物は入れ物に引っ張られやすいから、その辺りは勘弁して欲しい」




「自分の孫レベルの子に、手を出した事実は変わらないから安心してくれ」



 怒ってなどいないただ事実を述べただけである。決して怒ってなどいない。



「終わったら埋め合わせするから、本当に許してよ。とりあえずこれを渡しておくよ」



 転移符を渡すと逃げるように帰りやがった。今度から淫魔と呼ぼうかな。とにかくこれで次の仕事への準備は整った。行くとするか。新しい旅路へ。

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