第160話次の行く先
「お前に会わせたい奴がいる。悪いが着いてきてくれないか?」
ダイスから何か頼まれたのは初めて。正直不安ではあるけど、彼に私は託した。行くしか無いわね。
転移符って便利な移動手段で着いた場所は荘厳というには少し派手で、でも嫌な気分にはならない。そんな神殿のような場所だったわ。
「ダイス。ここはどこかしら?」
「ここはドラゴンの長の神殿?のような場所だ」
同時に奥から声がした。「その娘がそうなのか?」
「そうだ。顔は知らないのか?」
出てきたのは老人の姿をした人型の生き物だったわ。でもドラゴンなんでしょうね。感情に負を含む物は無いみたい。一応安全かしら。
「うむ、赤子だったゆえな」
「じゃあ、俺は用事を片付ける。話が終わったら念話符で呼んでくれ。迎えに来る」
「あい、分かった」
置いて行くと言われて不安が襲ったけど、老人の話を聞いて。その不安は消し飛んだ。お母様の友人との事。淡々と昔話でお母様の事を教えてくれて。もし困った事があれば頼れ。そう言った。
お母様の記憶は殆んど無い。ただ優しい、それだけが漠然と記憶にあったから、この老人の話は嬉しかった。
それから今どんな生活を、どんな場所でしているか聞かれたの。感情からは心配が伝わってきたわ。本当に良い方のようね。別に隠す必要もないのでありのままを伝えたら。
「それなら良い。良き人間とめぐり合えて、互いに良かった」と言っていた。私もそう思うわ。
それから色々話して最後には、お爺様と気付けば呼んでいたわ。なんでかしらね。
じいさんに預けた後俺は教国跡に向っている。復興の為だ。自分達が散々荒らしておいて復興・・・正直後ろめたさが尋常じゃないが。ルイの要請だ。餓えて死ぬ奴も見たくない。そこに居た連中には罪は何も無いのだから。
転移先にはルイがいた。
「で?俺は何をすれば良い?」
「ダイスには今まで通り商人をやって貰いたいんだ。この国は周囲4国が支援する自由国家に生まれ変わる。道を整えるから貿易の拠点としても便利だろう」
「俺のルートだとこれ以上の食料の買い付けは、迷惑になる。難しいぞ?」
「確かにダイスが言う通りだろう。この大陸でこれ以上やれば買占めの動きが出始めておかしくない」
「その言い方は、他の大陸に陣か符があるんだな?」
「察しが良い弟子は好きだよ。費用としては教国の隠し資産がある。これを使って食料や物資の買い付け。ついでに総本山の力を削ぎたいから、ここの荒地と農地の交換。あとどの程度の力があるか情報が欲しい。」
「宗教一つ潰すつもりかよ?」
「いやいや。この世界の創造主は多分あの神様だよ。それを信仰する事自体は悪くない。ただ、一度解体してまともな宗教になってもらうだけさ」
多分それは一時凌ぎにしかならない。いつか腐るだろう。人が関わる限り。
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