第152話選べ

「お前、助かったんだぞ?なんならその体を治してやったって良い。幸い破損した場所自体は無い様だ、どうにかなるだろう。それでも死ぬか?」



「もう良い。友も助かった。殺してくれ」



 なんなのこいつ?拷問って助かった後にまで響く物なの?トラウマになるのは当然として、助かる状況で殺せって・・・保留、保留。



「この場で殺して貰えると思うか?お前には聞かなければならない事がある。少なくともそれまでは殺さないし、死なせない」



 そう言い捨てて、残りの人間への処置を終わらせる。




 魔術を解除して、拘束済みの戦奴隷を壁の中へ転移符を使い飛ばす。当然行き先は兵に囲まれた逃げ場の無い場所だ。




「こいつらは当初の計画通り、もう魔術的奴隷ではない。従って制約もない。後は王に任せる手はずになっている。貴殿たちは王の判断に従い、この捕虜を扱って欲しい。尚、一人こちらで尋問したい。この男を借り受ける」



 一人の兵士がこちらに駆け寄り、膝をついて話し始める。俺はお偉いさんでもなんでもないんだ。そういうのは止めて欲しい。



「この度は商人殿の御助力、真にありがとうございます。この捕虜共は王の命で保護する事が決まっております。ただし、商人殿の命を優先させよとの事。その男は例外とします」


 楽でいいが、王命より俺を優先させろとか言っちゃダメでしょ王様。念の為捕虜達の鑑定は済ませているが。紛れ込んだ屑はいない様だ。



 兵士達は忙しなく、捕虜を移送したり、治療が必要な者の手当てをしたりとテキパキ動いている。



「さて、お前には色々聞きたいことがある。場合によっては殺してやる。構わないよな」



 転移符で場所を移動し、拠点へ飛んだ。それからポーションを頭から振りかけた。それと少量口にふくませ少し経ってから飲ませ、これで外側の傷と口の中の傷は多少はマシになるだろう。



 アーク


 レベル155


 力280


 HP1620/520


 防御341/180


 MP105


 速度80/20


 思考320




 流石に効くな。だが、完全に治ってもらっても今は困る。この程度で抑えるべきだ。まだ内部は酷いものだろうが、聞き出す状態としては十分だ。



「どうだ?多少は楽になっただろう?」



「俺に何を聞きたい?」



「この世界に来てからの事を全てだ。多少の省略は構わない。その後俺の問いに答えろ。それでも死を望むなら殺してやる」




 途中までは英雄譚そのものだった。そこから先はおぞましいの一言に尽きる。嘘は無いと思う。そりゃ死にたくもなるわな。今まで死を禁じられ、狂う事も出来ない。さぞ辛かっただろう。



「俺の問いだ、まずお前は力を失ったと言ったがアレは間違いだ。正しくは前の世界の者を対象にそのスキルが使えなくなっているだけだ。この世界の英雄なら問題なく使えると俺は思っている」



 動揺しているようだな、まぁ無理も無い。まだ戦えたはずだったのだから。



「理由だがこの世界、いや世界全ての繋がりが絶たれたからだ。そのスキルは信仰で武装するに性質は近いと思う。前であれば、繋がりがあったからそれでも使えた。しかし、今はこの世界でいる同類で尚且つその逸話を知ってる人間だけになる。当然出力不足で上手くいかない。よってお前はまだ、やれる」



「次にその体だが、幸い破損が無い。よってさっきのポーションで問題なく治るだろう。俺が言いたい事はもう一度立ち上がり、成せる事がお前には多々ある。無論これを無償という訳にもいかんが、助けても良いと思ってる。それでも死を選ぶか?」

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