第153話英雄は楽園で眠る

「殺してくれ」



 最早どうにもならないか。死にたくなる気持ちが分からんでもない。俺の場合は確実に復讐に走るだろうがな。


「了解した」



(王よ預かっている捕虜について話したい。今は大丈夫だろうか)






(商人様でしたら、いつ如何なる時にでも時間を作りましょう。それで、捕虜についてとは?)



(あの捕虜を殺そうと思う。あくまで慈悲に近い物だ。解放した以上、手を下すまでもなく勝手に自害するだろうがな。最早心が死んでいる)



(でしょうな。こちらでも彼については多少ですが、聞き及んでおります。傍にいた仲間からも終わらせてやって欲しいと)



 自分達では救えない。当然他でも無理なのは、アークの仲間が痛いほど理解してる訳か。



(こちらで手を下すがいいか?)



(構いません、こちらでもその様に処理しましょう)


(恩に着る)



(いえいえ。私に出来る事でしたら)


 それから少し状況を聞いて、門の開門を近いうちに約束をしてから念話符を切った。



「何処までも規格外な男だな。俺は死ねるのだろう?」



「死に場所くらいは選ばせてやれるぞ?どうする?」


「何処でも良い」



「それなら最後に俺の楽園で殺してやろう。そこなら静かに眠れるはずだ。たまに妖精が騒がしいがな。お前の故郷とかでもいいんだぞ」




「楽園で死ねるか、それは光栄だ。頼む」



 転移符を起動する。場所は己の領地。



「ようこそ空中島へ、ここがお前の死に場所だ。気に入ってもらえたかね?」



 島の端、空の上だと実感できる場所だ。




「感謝する」 そう言ってアークは正座して目を瞑った。もう話す事は無い。俺はルイから貰い受けた剣を取り出し、これは完全に介錯だな。などとくだらない事を考えて自分の中からこみ上げる感情を蹴り出す。




 赤銅色に輝くそれを振り下ろすとスルリと地面に転がるアーク。その後火葬して墓を建て埋葬した。




 気分が良い物ではない。ここで妙な感傷に浸る時間は無い。十分すぎるくらい時間は使ったのだ。



(ルイ、そっちはどうだ?)念話符を使いルイに話す。




(そっちは終わったようだな。こっちはある程度制圧が済んだけど、決め手がない。聖女様が厄介でね。城ごと結界で囲われてしまってお手上げさ。多分スキルだろうね)



(それはどうにかなるかもしれない。すぐそちらに行こう。転移符に座標を設定してくれ)



(了解。お手並み拝見といこうかな)








 さっさと終わらせてやる。いい加減に疲れた。

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