第151話巨壁の門前

 今から俺がやる事は一方的な虐殺である。相手は壁を越えることが困難で、俺はただ長距離射程のこいつで指揮官を打ち抜くだけ。


 他の兵士は戦奴隷を除き、矢を射るだけで勝てる簡単な仕事だ。内部の裏切りがこの手だと敗因だったりするが。門を完全に塞いでいるため俺かルイ以外では開けるのに数ヶ月は掛かるだろう。



 淡々と淡々とただただ鑑定で位が高い敵を打ち抜く作業。問題かと思ったアークだが、奴隷に落ちた理由が想像通りであれば、脅威ではない。後でどうとでもできる。



 多分アークだが。今まで、元の世界での英雄や物語の主人公等を使ってたはずだ。この世界の英雄を使えば話は違うが、思いついていれば、ああはなってないだろう。


 途中から面倒になり、見張り塔を飛び出して空中の足場から狙撃してたが。敵味方問わず唖然と見上げるのは止めて欲しい。君達戦争の最中にそれは無いと思うのだよ。



 途中からは爺さんとその部下が味方につき。それはもう地獄絵図というに相応しい風景だった。ブレスを吐きながら飛び回る集団のドラゴン。正直俺がいったか疑問に成る程だ。



(粗方終わったかの?)爺さんからの念話符だ。



(圧倒的だな。ついでだから周囲に連なる補給軍や後詰まで頼むよ)



(あい、分かった)


 教国はご愁傷様としか言えないな。何故戦争を仕掛けたか分からないレベルだ。俺も急な戦争の原因だろうがな。



 大体終わった。後は事後処理と彼をどうするか次第だ。戦奴隷は最早戦意は毛ほども無く。武器は城門前に捨て、そこから下がった位置で沙汰を待つ罪人かのように座り込んでいる。




 俺は王から拘束用の道具を借り受け、それを持って戦奴隷の前に立つ。




 俺を見ていた奴も多い、皆無言で恐れるような目でこちらを見ている。だが逃げ出そうと言う者はいない。逃げれば射られる事が分かっているのだ。



「二列に並び、座れ」自分でもこんな冷たい声が出たんだなと、思える声が出た。



 先に拘束用の道具を周囲に置いておく。何事も手順は必要だ。



 並ばせて始めたのは、最近は鍛錬をあんまりしてない、彼の魔術だ。起動と共に戦奴隷達は座った状態で前のめりに崩れる。死にはしない。俺もそうだった。



 それから一人づつ、奴隷から解放して、代わりに拘束用の道具を付ける。奴隷の首輪などは無理やり外すと、付けてる者の命を奪う。この魔術の前ではただのアクセサリーと化すがな。



 これを繰り返す事どのくらいだろうか?既に1万人近い人間に処置を施した。後はもう助からない者と例の彼だ。



 彼に近づくと「頼む、殺してくれ」ただ短くそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る