第149話(笑)が着いてない英雄

あれから、連絡はこまめに取り合い。相手の状況を確認している。



 相手はこの3ヶ月という期間で、道中の植民地から戦奴隷をかき集めながら巨壁の国に向っている。明日にでも敵は巨壁の国から見える場所に来るだろう。



(明日だ、所でルイ。どれだけ張り付けにすれば良い?)



(それなんだがな、必要が無くなった。その代わり、撤退まで追い込んだらこっちに来て欲しい。面倒な奴がいる。ダイスの意見も聞きたい。幸い向こうの愚策のお陰で余裕はある)



(了解、どんな奴か楽しみにして待ってるよ)



 一方巨壁の国は万全を期して、敵を待ち構えていた。



 王に待つ必要がなくなると伝えると。通達が回り異様な熱気に包まれる。巨壁の民の怒りがようやく晴らせるのだ。



 小さくだが敵軍が見えてきた。俺は巨壁の上に立てられた中央見張り塔に登り、時を待つ事にした。



 俺がやる事はただの狙撃。この日の為にこの一発700グラム近い弾丸を合間合間に作り続けた。正直このスキルチート具合がやばい。生物で無ければ好きな形に変更が出来るのだし、成分を取り出したり混ぜるのもお手の物。



 最初は間違いなくハズレスキルを貰ったはずだが。今や頭がおかしいレベルの物もいくつかある。例えば付与魔術とイカサマ、数の理。これがあるだけで。現代対物ライフルを使う一流スナイパーより、俺のほうが遥か遠くを確実に打ち抜ける。



 それに、これはルイに聞いて初めて知った話だが。鑑定は指定した事を詳細にすればする程精度が増す。ここまでは知っている事だが。対象の所属や役職等もこれで見れるらしいのだ。



 指揮官を打ち抜くと話した時に聞いたが、これで更に精度がますだろう。この力を持って地球に帰りたい・・・無理な話か。



 前列が射程に入ったが、何もしない雑兵等どうでも良いのだ。どうせ戦奴隷、巨壁に手も足も出ない。ん?最前列付近奴、一人だけ他と毛色が違うのがいる。どう見ても戦える姿には見えない。



 スコープ越しに見てみたが、酷い物だ。指は全て潰されている。この様子じゃ足の指もだろう。顔も刻まれた後、奴隷印に首輪の二重使用。フルコースも良いところだ。服で隠れているであろう部分もこれでは無事ではないだろう。




 その歩く事さえままならなさそうな、奴隷を甲斐甲斐しく、周りの奴隷が肩を貸しながら歩く。




 ステータスを見てみるか。ここまでして連れて来るんだ何かがあるのだろう。



 アーク


 レベル155


 力280


 HP1620/300


 防御341/120


 MP105


 速度80/10


 思考320



 スキル


 概念武装・・・己が知り、多くの人が知るような著名な人物を概念として自らに卸す。その卸した者の逸話や力を自力に上乗せできる。



 英雄・・・多くの人々を救った者の証。全能力を上昇させる。



 化物じゃないか。怖すぎる。だがあの姿では・・・スキルがまずいな。殺すか?今なら余裕を持って殺せる。



 勇者に英雄を殺したとなると、正直俺は何になるんだろうな。解放して回復させてやれば。こちらに引き込めそうな気もするが、能力だけにリスクも高い。



 さて、どうするべきか。




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