第142話返済

今回の代金です。そう言って連れて来られたのはどう見たって宝物庫だった。



 文官にどれでしょうか?と訪ねたら。「ここにある全てです」と返された。いやいや、確かにだ、ここまでアレだけの物資を障害が闊歩する中持ってくるのはほぼ不可能よ。それでも、多すぎだ。



「こんなに払って財源は大丈夫なのでしょうか?」素直に聞いてみる。だってだ、部屋自体はそこまで広くない。それでも10畳は軽くある。そこいっぱいの金銀財宝というに申し分ない物が多々ある。無論金貨等もだ。



「これは正当な額です。商人様の働きに相応しい額にございます。財源に関しましては潤沢です。これだけの支払いではどうと言う事はありません」



 凄いな。そりゃ欲張りな権力者が狙いに来ますわ。では頂くとしますか、ここでは別に空間庫に入れる所を隠すまでもない。



「それと枯れた泉や谷など貯水できそうな場所を地図に書き出しました。国としましても、この場所は安価でお譲りできます」



「とりあえず、全て買おう。代金は今回の食料。足らない分は出す」



「因みに食料はどの程度お持ちで」文官は羊皮紙を取り出して問いかけてくる。



「前回の7割程度だ。仕入れもやりすぎると、そこに必要な分が値上がりするんでな」既にしているが微々たる物ですんでいる。これ以上の買い付けは、仕入先の新規開拓が必要だろう。



「わかりました。代金ですが十分です。少しこちらが受け取りすぎているので、中央に小さな池の跡があるのですが、そちらもお付けします。これは王からの許可もある物ですので御安心を」



「その土地は重要な位置ではないのか?」




「そうですね、交通の便が良く一等地と言っても良いでしょう。しかし、こちらも不毛の地です。町を作る事は出来ても水源を確保できないのです」




 この土地は年間降水量が少なく、今まで地下水で生きてきたのだが。それも尽き掛けてるようで慢性的な水不足だそうだ。それでも今までは豊富な資金力で必要品を買っていたのだが。教国の侵攻でそれも難しくなっている。



 本当に詰んでるというか脆い。



 貰うものを貰い、城から拠点に戻る。ルイへの返済を早める為だ。既に1割近くは返しているが早いに越した事は無い。



 今思えば転移符を、自分で作成できるようになった時点で難しい事ではなかったのだ。難しいのは機密の維持と狙われないように立ち回る事であって稼ぐのは元手があるのでどうとでもなるのだ。



 ルイに念話符で返済の一部を渡したいと言うと「丁度話したいこともある」と言ってすぐに拠点に転移して来た。



「やぁ最近は本当に忙しそうだね。どうにも楽しい事をやってるようじゃないか?」



「どこまで御存知で?」



「どうやったかは知らないけど、龍種の権力を持つ者と縁を結んで。それから彼等が守護する巨壁の国への支援に向った。そんな所だろう?」



「全く以ってその通りです。あくまで商人としての仕事ですが間違いではないです」



「そこで、莫大な利益を上げた。あの国は財力だけはあるからね。今の情勢で君のような存在が儲けるのは当然さ。龍種との縁が大きいがね。それより、そうしないうちに、教国の屑共が苦しくなってくるはずだ。実に気味が良い。巨壁が危なくなれば僕を使うと良い。敵が奴等なら大歓迎だとも」



 並々ならぬ恨みがあるのだろうか?ルイらしくない。



 元手がいるので7割程渡すと。「稼ぎ過ぎだ」と笑われた。8割方返済は終わった。



 ここからはまた重労働なんだろうなぁ。




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