第141話英雄(笑)

 調子に乗りすぎた。だが、後悔はしない。悪い事ではないし、爺さんのせいにすれば何とかなる。はずだ・・・きっと・・・たぶん。


「では商談に入りたいのですが」



「この泉の水はただ運んできただけの物、と言っても途方も無い量ですが。それと試してないので分かりませんが土が明らかに違う部分、作物が育つ可能性があります。」



「今回の商品は、この土地と持ってきた食料になります。」


 俺の前に王は来ると、そのまま跪き・・・やめてくれよ。それはまずい。




「相応の価値で買い取らせて頂きます。しかし、事が事だけに査定や支払いの準備に時間を要します。どうかお待ち頂きたい」




 即決で値段を決めて、はいって代金が来たら怖すぎるだろ。時間が掛かるのは当たり前だ。



「この国にはもう、このような泉跡や、水を貯めれそうな場所はないのですか?」



「あります、もしやこのようにして頂けるので?」周りの音が消えた。先ほどまで、聞こえた話し声消えただけなのだが。皆が注目してるのがわかる。



「今回の収益次第ですね。採算が取れるのであればやろうと思います」



 やめろお前等、だから跪くな。爺さんにそれならまだ理解できるが。俺にはやめろ。俺は人間だ。



 「是非お願いします。商人様には相応の対価を出すと誓います」




「一ついいだろうか?王様、私はただの人間で商人でしかありません。もっと普通にして頂いて良いのですが」



「とんでもありません、商人様が救った人の数を考えれば、英雄と言っても過言ではないのです」



 食料を持ってきただけで英雄とは・・・なんか嫌なんですが。間違いなく英雄(笑)である。



「いえいえ、それを感謝するなら、この国の盟約者でしょう。私は仕事をこなしただけです」



「勿論盟約者様には感謝しても足らないくらいです。それは商人様も同じことなのです」


 これは駄目な奴かもしれない。大体何故こんな事をしようとしたのだろう。少しばかり考えてみるが、正直そんなに金は必要ではない。ルイへの完済も時間の問題だし。そんな事より鍛錬する方が大事なはずだ。



 もっとシンプルな話だった。教国が気に入らないのだ。ああ、なんかしっくり来た。そういう事なら問題は無い。自分の安全が確保できる限りやれば良い。



「感謝は受け取ります。ですが跪くのは止めていただけると助かります」



 それから一度城に戻り、他の地の選定。泉の査定。が行われるとの事だ。



 それから、俺との念話符を王に頼まれたので、渡してやった。お得意様だし多少はね?



 このペースだとルイへの完済は早そうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る