第140話泉のお披露目

4日が過ぎた。この頃になると、水も溜まり出し、20日が過ぎる頃には溢れ出しそうになっていたので3つの札を除き停止した。多少溢れる分には水の逃げ道があるので問題ない。



 この20日の間だが俺がやったのは、通常の業務。仕入れや納品、そして巨壁の国で買った土地の土弄りだ。取った土を混ぜて、水を少し蒔いただけだが。この1反いったんだけ明らかに他と違う。ひび割れた土地で畑が出来そうな土があれば目立つだろう。



 とりあえずこのくらいで良いだろう。ここからは商談の時間だ。



 俺は爺さんに貰った変装の道具を使用し城に向う。



 当然末端が知る訳も無く、城門前で止められる訳だが



「こちらにはどのような理由でいらしたのでしょうか?」



 この門兵、凄く丁寧だ。俺のことを知った様子はない。元から丁寧なのだろう。少しだが好感が持てる。テンプレなら妙に奢った態度でぞんざいに扱われるんだがな。



「文官の方か王に商人が約束の食料品を持ってきたとお伝え下さい」



「貴方が噂の。貴方のお陰で餓える民が減りました。ありがとう。上へ連絡を付けて来ますので少々お待ち下さい」



 門兵は頭を下げると、走っていった。それから他の門兵に似たような感じで礼を言われた。ここまで歓迎された国は初めてかもしれない。まぁ爺さんのせいなんだがな。



 しばし待つと。中へ通され。文官の一人が俺を確認すると、そのまま謁見の間に通された。




「商人様、今回もありがとうございます。なんでも食料をお持ちいただけたとの事」相変わらず腰が低すぎる王だ。もう少し偉そうにしても良いと思うぞ。





「今回は色々と面白い話と物をお持ちしました。所で王よ私と少しばかり散歩をしませんか?是非見て頂きたい物があります。無論文官の皆様や護衛の皆様も一緒で構いません」



「どこまでかお聞きしても?」




「私が買った土地までです。きっと喜んでいただける物と思います」




 王も文官達も首を傾げるばかりだったが。俺の機嫌を損ねる方が嫌だったのだろう。畏まりました、と言うとバタバタしだした。日を改めてもいいのだが・・・正直俺の扱いが厚すぎて怖い。




 1時間もしないうちに「お待たせしました」ってそれで良いのか王よ。



 さてどんな反応をするか楽しみだ。最悪の事態を考えて、反撃と逃走の準備だけはしている。欲を出す可能性は十分過ぎるほどにあるのだ。



 結果は予想を違うほうに大きく裏切った。いや、方向性としては予想の範疇ではあったのだが、規模が違った。結論から言うと感謝だ。しかし、これは宗教的なそれと化してないだろうか?王だけでなく他の人間もだ。



 泣きながら膝を着け、歓喜と共に感謝を述べる。正直怖いわ。落ち着くまでかなりの時間を要した。



 身元ばれないからってやりすぎただろうか?

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