第134話商品受け渡し
随分待ったが、事が事だけに早かった方だろう。目の前には最早威厳を投げ捨てた王の姿があった。民の為にここまで出来ると思えば素晴しいのであろうが、できれば止めていただきたい。俺はあくまで商人としてここにいる。
紹介した人物が特殊だとしても、対等の立場で良いと思うのだが。これはいささかへりくだり過ぎだ。
「お待たせして本当に申し訳ない」
「いえいえ、あの様な者がいては後々問題が出るでしょう。この程度の時間で済むのなら待ちますよ」
非常に暇ではあったが。事実、俺の情報が、少しでも漏れない可能性はないのだ。排除するに越した事は無い。
「それより、食料庫への案内ありがとうございました。このままここに商品を出しますが、査定する準備はよろしいでしょうか」
「はい、こちらの者共が受け賜ります」
とりあえず3割の物を出してしまうか。反応をみて、残りをどうするか決めよう。
「これで足りるだろうか?」
王は勿論、査定の文官や着いて来た他の人間まで唖然としている。やりすぎただろうが、秘策(脳死)がある。
「これは、盟約主殿から借り受けた物の力です。驚かれるのも無理はありませんね」
「本当に素晴らしい、ありがとうございます。すぐに査定し、約束の額をお渡しいたします」
「所で王よ、これだけで足るのだろうか?」
「足りるかと問われれば足りません。しかし、これでこの国の未来は繋がりました」
「まだある、と言われれば買うだろうか?」
「是非とも買わせてください。是非」
凄い勢いだ。そこまで言われれば出そう。全てを出しても構わないだろう。また仕入れれば良いだけのことだ。
残りを出すと。歓声があがった。そこまで食料自給率が低いのであろうか?
「王よ、この国はそこまで食料自給率が低いのでしょうか?」
「お恥ずかしながら、この国は降水量が少なく、常に水が不足しております。更に1年を通してあまり気温が上がる事も無く、作物を育てるのには不向きなのです」
それは、その気候や土地にあった作物を育てれば良いだけではないだろうか?サツマイモや馬鈴薯なんかはいけそうなイメージがあるが。
「この取引が終わったら、この国の土地や農業を、見せてもらう事は可能でしょうか?もしかしたら、合う作物を知っているかもしれません」
「本当ですか? もし、可能でありましたら是非、是非にお願いします。何があろうと恩には報います」
必死さが怖い程だ。こりゃ相当ヤバイんじゃないだろうか。水の方は試して見たかった事もあるし、丁度いいだろう。
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