第125話おしゃべりなお爺さん

 ドラゴンがゆっくりとこちらに飛んでくる。(それに乗るが良い。我が家まで案内しよう)



 仲間を殺したにしては、随分友好的な態度だ。罠の可能性も高いが、罠を食い破る事もできるはずだ。



(安心するが良い、罠など無い。これでも誇り高い種族と自負している。先ほどの馬鹿は、例外だ。死体は好きに使って構わんから、水に流してもらえればありがたい)



 飛んで来たドラゴンは俺の近くに着地すると、乗れと言わんばかりに伏せた。折角の御好意だ。俺は階段のように足場を作りドラゴンの背に乗った。



 ドラゴンの乗り心地は、まあまあで風除けのなにかしらが働いているのだろう。それなりの速度で飛んでいるのに、振り落とされそうになる事は全く無い。翼の存在意義はあるのだろうか?



 そうこうしてるうちに大きな洞窟に着いた、これが彼らの塒ねぐらだろう。



(ようこそ我が住みかへ、人間のような、細かい事は出来ないので、見苦しいかもしれぬが、寛ぐが良い)




 そのまま、奥に進むと、白髪碧眼の老人が岩の上に座っていた。



「人の姿の真似事など久しくしてなかったが。なかなかのものであろう?」老人の姿をしたそれは悪戯小僧のような笑顔でそう言った。



「完全に人間のそれだな。完璧だと思う。」




「昔、神に会った時には子供に化けると、強者からのウケは良いと聞いたが。確か・・・ロリババアだったかの? 意味が分からんかったが、そっちがよかったかの?」



 神・・・老人捕まえてしかもオスに、幼女に化けろとか、業が深すぎませんかね?



「その必要は無い。神であろうが、思考する者。おかしな思考の一つや二つあって然りだろう」



 老人の笑いのツボに入ったらしく、最後のほうには苦しそうに引き笑いをしていた。



「お前と言う人間は実に面白いな。呼んで正解だった。神ですら不完全ときたか。真にその通りであろう、不敬かもしれんが、真理であろう」



 それから会話は弾んだ、この老人のドラゴン、厳格な見た目に反し、物凄いおしゃべりだ。ギャップが凄い。因みに名前は白の者と呼ばれてるらしい。




 呼びにくいので、白さんと呼んで良いかと聞いたら。二つ返事で許可を頂いた。このドラゴン、さっきも言ったがおしゃべりが大好きだ。しかし、長であり、その身から出る雰囲気は厳か(おごそか)気軽に話しかけにくいタイプだ。おもいっきりしゃべれる今が物凄く楽しいそうだ。




 それからは白の愚痴、特に人間が弱い癖に素材目的で攻撃してくる、とか孫が冷たいとか、色々話した。俺が人間に対して、ボロクソに述べると「ダイスも人間であろうに」と苦笑していた。




「人間は人間であるがために愚かである者が多いのですよ。俺も方向性は違えど、愚か者である事は違いありません」



「ダイスが愚かか・・・そうは思えんがの。それよりだ、商人と言う事は、我とも商売はできるのか?」



「勿論出来るとも、何が欲しいか次第ではあるが」




「実はの、我は何度か人間に化けて、人の国を見に行ったことがあるのだ。そして、その国の長の住処を見た。外装だけしか見てないが、内装も素晴しいのであろう。外装は無理でも内装くらいはどうにかしてみたいのだ。どうだろう?金は払おう。我々の死後の部位が欲しいならそれも好きにしても構わない。噂に聞く壮言な部屋とやらにしてもらえないだろうか?」



 龍の長からの商談はなんと、リフォームの依頼だった。




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