第121話修練の合間に

 ただひたすらに、鍛錬と実の納品だけをしてきた。合間に、休む場所を作ったりはしたが。ほぼ全て鍛錬に費やしたといって良いだろう。



 結果として、ある程度の格闘を出来るまでに動けるようになった。計1年以上費やしてやった事は自転車の補助輪を外しただけ。あるいはオートマからマニュアルに乗り換えた程度の事だろう。



 一先ず鍛錬は続けるが、やるべき事・・・いや、やりたい事を進めよう。妖精達が、俺にもたらす恩恵は、実だけではなかったようだ。蜂蜜である。



 一面の花それも広範囲、蜂にとっても楽園であろう。この花だが、俺の世界には無い品種のようだ。それも数種類。その蜜が混ざり合い食べた事もないような甘さになっている。甘さは強いのに、癖が無く、スッと入る。



 ハニートーストとかにしたら最高だろうな。まずはミードか・・・蜂蜜漬けなんかを作るのでも良いな。



 蜂蜜漬け・・・妖精の実は何故味が良くない・・・甘味が足らないからだ。香りも良いし、酸味も程よくある。だが、決定的に甘味が足らないのだ。ならばこそ蜂蜜につければ・・・ありかもしれない。



 妖精達に渡される蜂蜜だが、軽くろ過するだけで製品となんら変わりない。蜂も器用に蜂蜜を渡すとか、ファンタジーは改めて異常である。今更ではあるが。



 それでは妖精の実の蜂蜜漬けを作ろう。まず水で洗い、輪切りにしていく。次に、皮を外し蜜その上に実と層を作っていく。



 すぐ終わってしまった。他にも色々作るとするか。胡桃、レモン、アーモンドモドキ。生姜、あとあれだ。昔テレビで見た桃とアーモンドと生姜のやつ・・・桃さえあれば作るのだが。変り種でトマトもやるか、美味いんだよな。



 後思いつくのは、ハーブを漬け込んで、風味をつけるくらいだが・・・元が良いためあまり弄りたくないな、少量で試すとしよう。



 焼き菓子、も焼き始めるが、匂いに釣られた精霊少女に奪われてしまった。無論妖精も一緒だ。アレだけ焼いたお菓子も一瞬でなくなってしまった。



「蜂蜜も美味しいけど、人間さんのお菓子はそれ以上でつ」ぶんぶんと尻尾を振るコボルト。



 他の妖精も同じような反応だ。喋れる妖精は多くないが概ね喜んでいるから良しとしよう。



「本当に美味しいわ。ここに来るまで、こんな生活が出来るなんて夢にも思わなかった」



 どんだけ菓子で感動するのだよ、精霊さん。



 鍛錬、納品、後色々。疲れるし、騒がしいし。だが、今俺は幸せなんだろうと思う。

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