第120話鍛錬2

 鍛錬、納品、鍛錬このサイクルをアレから半年ほど続けている。今では生活の大半をこの魔術の元で過ごしている。


 やってる事は、普通の人間が自己鍛錬でやる物と同じだ、走り、跳び、己の目指す動きをひたすら反復する。理想を言えば相手があれば更に効率が良いのだが、まだ早いか。怪我するのがオチだな。それでも速度はかなり上がる。無い物ねだりだ。拳を突き出し、剣を振り、蹴りを放つ。まだまだやりたい事はあるが、率先してやるべきはこっちだ。




それと、ここで行った鍛錬ではステータスは一切伸びない。少なくとも筋力はあがってるので、何かしら変化があっても良さそうなのだが。



 変わりにスキルが一つ増えた。精密動作だ。これはこの空間で鍛錬した事で得たとみて間違いないだろう。効果としては、己の起こした事象とそれに伴う誤差を限りなく小さくする。例えば的に物を投げるとしよう。その時に的からずれる、このような誤差を、自分が届く限り小さくするのだ。



 的当ならば、投げるものが的に届く力さえあれば的に当たる。そういうものだ。



 立ち上がることすら難しかった所から頑張った甲斐があった。


 さぁ、鍛錬を始めよう、今日も明日も、明後日も。


 ある程度満足できるまで、基礎はやった。次は型だ。ルイに教わった事をひたすら、反復していく。何かに追われる様に。



 何に追われてるかは理解している。見えない敵だ。多分そんな物はいない。だが、何時来てもおかしくないのだ。空の上が安全? ああ、そうだろう。陸地よりは人が来る可能性は少ない。だが、こないとは限らない。



 この世界に来た異界人、あるいは新技術により飛行が可能になるなど、いくらでも可能性はある。現にここを見つけたのは、異界人であるルイだ。




 これを見つけたのが、魔物ならまだ良い、すみわけが出来れば共存ができる可能性がある。しかし、人間の場合はどうだろうか? 望みは薄い、それは歴史が証明している。新大陸を見つけた強国がやる事はなにだったろうか?



 先進国が遅進国にした事はなにか。現代ならそうはならならいかもしれない。だがこの世界の現状を考えれば、火を見るより明らかだ。



 俺が前の世界で学んだ事は、人間は共闘もできるし、愛し合う事もできる。だが、信じ合う事など幻想だと。もし、できたとしたら、それは最早人間ではないし、生物でもない。



 人間などいなくなれば良いのに。

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