第118話何事も程ほどに

 久しぶりにガウとは酒を飲んだが、どうやら今日は愚痴を聞く日だったようだ。俺と娘の問題で娘に厳しく注意した所までは良いが。それ以来顔もほぼ出さない、話すら聞いてもらえない可哀想なお父さん状態のようだ。



 因みに奥さんの所には顔も出し、仲良くしてるようだ。それで余計に寂しいようだ。仕事の途中で総長に捕まりここまで連衡されたりと、散々のようだ。



「ダイス君、私はどうするべきなのかな? 私には、分からないよ」いつもの飄々とした彼は無く、疲れ果てたオジサンがそこにいた。



「無理やりでも一度話しするべきだろうな。そこで分かり合えないようなら、親子であろうが無理だろうよ。どちらかが折れない限りは無理さ。俺も親とは価値観が合わないから距離を空けて、適度な距離感を取ったよ」



「君は、寂しいというか、乾いてるな」


「そっちの方が上手く行くもんだ。俺はだが。あくまで俺基準だからあまり参考にはしないほうが良いかもな」



「どうにもならなかったら、それを参考にさせて貰うよ」



 ガウはきっと娘への期待が高かったのだろう。現に優秀でもあった、俺にさえ会わなければなにも無かったかもしれない。いや、あの行動を考えれば、いつか何処かでやらかしてた可能性は高いか。



 そんな事を考えていると、ガウがネガティブな独り言をぶつぶつと言い始めた。こいつはあれだ、飲みすぎると駄目な方向に落ち込むタイプか。面倒な。



 あーあ、寝ちまったよ。ギルドまで担いで、職員に引き渡した。人間の距離も、酒の量も程ほどが一番だな。



 ポーションはルイに任せているから良い。次は、島に拠点を作る事と、鍛錬だろうな。今日は飲みつかれた。



 後日、欠片から得た魔術を行使しながらの鍛錬を始めるのだが、この時の俺は、まだ甘く見ていたのだ。彼の作り出した魔術とそれに合わせた鍛錬の厳しさを。

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