第117話ギルドにて

「戦国時代めいたのがいたと」ルイは考え込むように黙り込む。



「未来は無いと思うが、過去はあるという事だな」俺は腹の打たれた部分を摩りながら言う。



「そいつはまずいぞ。ダイス的に言うと、お伽や伝説の世代の魔術師なんかがこられた日には。手も足も出ないぞ。あいつ等はまだ向こうの世界に魔力が溢れてた時代の人間だ。この世界との親和性だけ見ても脅威だ」



 伝説の世代ね。クーフーリン(笑)とかならいたが。もう一度神が接触して来たら聞くしかあるまい。



「そろそろ時間だ。ルイにも同席してもらうぞ」



「ポーションの件か、少し早いが行くとしようか」



 ギルドに付くと顔パスで奥に通される。



 部屋に入ると 「いやぁ待っていたよ」と総長、ガウ、もクリートもいる。



「ダイスさん、お隣の方は何方でしょうか?」クリートがルイを見ながら言う。見た目は子供だし、当然の反応だろう。



 ルイはそれが分かるのだろう、少しふて腐れているように、こちらを見ている。ただの子供であれば実に微笑ましい光景だ。タダの子供であればだが。



「この人はルイ。これからの取引を引き継ぐ相手です」



「今御紹介に預かりました、ルイと申します。今回は貴重な妖精の実を使って、屑汁を作ると聞きましたので、私が代わりに本物のポーションを作る担当、及び交渉役となりました。お見知りおきを」そう言って、ルイはクリートに自作であろう、ポーションを渡す。睨みながらだ。



 クリートは愛想笑いをしながら受け取る。



「このポーションを査定してから出ないと、金額は決められませんね。申し訳ありませんがまた後日、お越しいただいてよろしいでしょうか?」



「俺は、また旅に出ると思うが、交渉役のルイがいる。問題はないだろう?」



「問題はありません」クリートは言う。




「今日はここまでかな?帰るよ、何故かは知らんが不愉快なんでね」そういってルイは帰ってしまった。



「ダイスさん、すいません」クリートは俺に謝る、本人に言えば・・・それはそれでまずいか。



「いえ、良いんですよ、彼は俺より年上の息子を持つ父親です。見た目はそう見えませんがね。俺も先に言っておくべき出した」



「ダイス君終わったかい?」総長は言う。次にいう事はきっと。




「レシピを、新しいレシピを売ってくれ」だと思ったよ、ガウが話したそうにしているが、悉く他にタイミングを潰されている。



「ガウ、久しぶりだな。後で飲みに行こう。いや、家で飲むか、良い酒もある」



「ありがたい、まずは総長の件を先に」



「では総長殿、厨房に行きましょう」



 厨房で教えたのは、クロワッサン、バターと生地の層を作る事で出来る歯触りが特徴だ。



 この料理、正直面倒なので作るのはあまり好きでは無いが、この際いいだろう。物珍しさは間違いないし、パンなので、そこまで口に合わないとかは無いと思う。




 作業を、目を輝かせながら見る、総長。あれやこれや聞いてくるのが面倒だが、仕方ないだろう。




「実に楽しい時間だった。当然味も非のつけようが無い。値はこちらで決めて良いとの事だが本当にいいのか?」



「構いませんよ、この料理に総長が適当と思った額ですから」



「下手な値段は付けれないなこれは、期待してくれたまえ」



 用は済んだと、足早に帰っていく、総長。本当に自由な人だ。ガウは残ってくれている。さて飲むとしようか。

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