第112話総長、到着

 私は今驚きを隠せないでいる。隠す必要はないのだが。ダイスという非常に有益な人間が来て数週間がたった。そろそろ、ガウェインの運がよければ総長に伝わる頃だろうと予測していたのだ。しかし、目の前にいるのは総長。ギルドのトップがここまでフットワークが軽いとは思わなかった。



「確かに、予想を超える速さで私はここに来ただろう。だが、そこまで驚かなくてもいいだろう」総長は肩を竦ませやれやれと言った、感じだ。この速さが総長たる物なのかもしれない。




「いえ、あまりに早いので、驚きました。どうやったらそれほどの速さで来れるのでしょう?」



「なに、グリフォンに乗ってきただけだよ。直線距離で障害物も無ければ1日あれば十分さ、所で、ダイス君との話は」



「妖精の実については事実でしょう。入手ルート等は見当も付きません。余計な詮索や探りを入れる真似はしない方が賢明かと」




「いいね~、君のそう言う所を買ってるんだ。彼は病的な程に疑い深い、多分我々でも不利益があると思えば簡単に縁を断ち切ろうとするだろう。だが、上手く付き合えば、これほど優秀な人間も少ない。君は真の意味で欲深い。だからこそ、最終的な利益で動ける。どこぞの連中とは違う」



「ありがとうございます」私はこの職場が好きだ。貢献すればするほどに地位も金も手に入る。地位は打ち止めがあるが、金は際限無くだ。実にやりがいがある。



「しかしだ、クリート君。一つ問題がある。わかるかな?」



「ルートの確保ですね? しかも他のギルド長にはばれない様に」



「その通りだ.我々も残念ながら一枚岩とまでは行かない。今回の代物は裏切りが出ても仕方ない様な代物だ。我々で争う分には、私自ら出れば済む。しかし、ダイス君のところに繋がるのは非常にまずい」



 やはり、総長も同じ事で悩んでいたか。ギルドといえど全てが綺麗な組織ではない。どうしても他の勢力の関係者がねじ込まれてくる。逆も然りだから仕方が無いのだが。




「私もそこで詰まると思ってました。しかし、とりあえずダイスさんとの契約だけでも結び。それから考えても遅くはないかと」



 机の上のコップの中身を空にして総長は「ガウもこっちに向っている、3人なら何か良い案も出るかもしれないな」

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