第111話助っ人を頼む
俺は住人たちの移動を考えている。無論勝手にではなく、住人には説明した。住む場所に多少の条件はあるが、目星はついている。
条件はこうだ。
一つ。結界を張り直す際、範囲内に外敵がいない。か、いても、すぐ間引く。これは戦闘力があまりないここの住人の事を考えれば当然だ。
二つ。自然豊かな場所。結界を張る上で効果を上げる為だそうだ。
この条件の土地など早々にない。が、間引けば別だ。
必要な条件を聞き、食料を渡し、すぐに俺は拠点に戻った。
ルイが出かけている為、店の手伝いをしながら、待つことにした。
「ダイスさんがいると、やっぱり違いますね。これだけお客さんがいても、安心感がちがいますよ」
客で埋まった席を見渡しながらスロートは言う。
「ここまでお客さんが多いのは、お前等夫婦の努力だな。たまに手伝いに来るよ。転移のスペースを借りてるしな」
なんか居酒屋でバイトしてた時を思い出すな。あそこは地獄のような忙しさだったが。
店を閉める頃に、ルイは戻ってきた。転移の部屋から出てきたという事は、かなり遠い所にいたのだろう。
ルイとレイナだけに集まってもらうつもりだったが、ミルとスロートも来ている。
「何々?私達はのけ者とか、悲しいなぁ」ミルは相変わらずである。母親になったのだ、もう少し落ち着いて欲しい。
「のけ者というのは違うな。頼みたいが、お前等夫婦は店で忙しい。子供もいる。頼むのが現実的じゃないだけだ」
「こっちも暇という訳じゃないんだけどね」ルイは言う。
「ああ、分かってるさ。信用ができて、頼める奴が他にいない。それに、頼める能力がある奴も同じくいない」
「ルイが必要って、かなりの事。何をさせるの」レイナを警戒させてしまったようだ。
「ルイと初めて出会った場所があるだろう? あそこから更に奥に進むと泉があるのは知っているな? あの周囲の魔物や獣を間引きたい。しかも、あまり猶予がないんだ。それ相応の報酬は出す。頼まれてくれないか」
「可愛い弟子の頼みだ。レイナの修行にもなる。断る理由がないね。レイナもいいだろう?」
「分かった」と短く返事するレイナ。
「所でダイス、後で二人で話そう。何処まで渡した魔術書を学べたか、確認したい」
ミルは子供がぐずり出したので、出て行ってしまったが。他の面子とはそれから酒を飲みながら他愛の無い話をした。
スロートも少し飲むと、戻ってしまった。レイナは酒に弱いのか眠ってしまったのでルイが部屋に連れて行った。
戻ってくるとルイは「本題に入ろう。君は何をするつもりだい? 予想はある程度付くがね」
「話しますよ、でも先に予想を聞かせてくださいよ。探偵さん」
「なに、簡単なことだよダイス君」どこぞの名探偵みたいな口調でルイは語り出した。
ルイは俺の肩を指でなぞり、その指を俺の目の前に出すと。
「さて、ダイス君、実はこの指、今何か付いているのだが、鑑定を頼めるかね?」
何も見えないのだが、何かあるのだろう。鑑定の範囲を絞れば出来るはず。
妖精の蝶粉・・・魔力の粉、微々たる魔力の為見え辛い。
成る程、俺が何と接触してたかは知っていた訳だ。
「それに、服についてる毛は何の毛かな? ズボンの裾についているぞ? この状況でこの前君がギルドに向った事、そして君がここに来る前何処にいたか、それを考えれば、答えは出ると思わないかい?」
「どうやらお見通しのようですね」
「まあね、君は脇が甘い時がある。今回は隠すつもりがないようだから良いけど、気を付けたほうが良い。ついでに一つ聞いていいかな?」
「どうぞ」
ルイは難しい顔をして「君は何故、妖精を助けようとしたんだい? 確かに利益はあるだろう。だがデメリットと天秤に掛けながら行動を取る君にしてはらしくない。いや、エルフの時もそうだったのかな?」
「俺のこれは餓鬼の駄々と同じだ。気に入らないから、どうにかしたい、それだけです。巻き込んでいてこの言い草は無いと思いますがね」
ルイはジョッキを空にしながら「いいよ、君のそう言う所は嫌いじゃない」
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