第91話旅立ち

 7日は驚くくらい早く過ぎた。まぁあいつらは俺が出て行くとか、完全に忘れて日々の忙しさに追われている。湿っぽくなる間柄でもないが、余計な物は省くとしよう。



 部屋は既に何もなく、綺麗だ。借りもなし。荷物は空間庫。



 いつものように、何事も無く、家から出て。町の外へ出る。



 面倒も無く、外に出たまでは良いが、一人だけ付いてきた奴がいた。



「寂しいじゃないか。せめて念話符くらいもっていって欲しいかったな」



 ルイだ。こいつは得体が知れないというか、敵わないというか。


「あそこにいるのは一年。そういう契約でしたので」



「それは良い。だが、報酬くらい受け取っても良いと思うよ」



 そういって俺に、一振りの刀状の刀剣を渡す。しかし、これは派手だ。なんというか、鞘から刀身に到るまで赤銅色しゃくどういろだ。しかも普通の赤銅より赤が強い。赤銅とメタリックレッドを混ぜてマッドをかけたような、なんとも言えない色をしている。



「奇抜な色付けですね」顔を引き攣らせながら言う。



「君もそう思うか・・・だがこれは、素材その物の色なんだ。向こうの世界から一緒に来たんだが、二振りあるからあげよう。言っておくが、向こうの世界でもこの銅で出来た剣なんか10本もないからね」



 そんな希少な物なのか、この派手刀。



「まぁどういう銅なのかは、君に追加で上げた本をちゃんと読めばいずれわかるよ。そして感謝するが良い」



 ショタがドヤ顔をしている。見てる分には微笑ましい光景である。



「希少な物をありがとうございます。ここぞと言う時に使わせてもらいますね」



「それ、使う気無いよね? それ、本当に凄いからね、切れ味と強度は神がかってるから。派手で目立つのヤダし、お蔵入りとかやめてね」



 多分自分も、滅多に使わないんだろうな。普段使いは無理だろうが、一応使おう。



「最後に、私はこの町に拠点を置く。旅をする事には変わらないが。だから君はいつでもこの町に戻ってきてくれ。 少なくてもあの子達と私はいつでも歓迎するよ」



「後だ、これはお願いだ。あまり期待してはいないから、気に留めとく程度でいいよ。私の目的は前に話したね? 手がかりは今の所、総思根源への干渉ってのが有力なんだ。概念なんかは本にある。出来た人間などいない訳だが。もし、手がかりがあれば教えて欲しい」



「分かりました。でも、あまり期待しないでくださいね」



「可能性が那由他に一でも上がればそれでいいんだよ」



「引き止めて悪かったね」



「いえ、最後に話せてよかった」



 こうしてルイと別れた。


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