第82話パンケーキのような物

 本当に卵を持ってきやがった。なんか疲れている、総長さんには悪いが、あまり時間が無いので、サクサク教えていこう。


「とりあえず見て、聞きたいことがあれば聞いてください」



 卵を受け取り、ボウルを二つ用意する。白身と黄身を分け、黄身の方には振るった、小麦粉とシロップを入れ、混ぜる。



 次に白身だが、こいつは泡立て器でひたすら混ぜる。混ぜる前に少量の塩を入れるとなお良い。混ぜる途中で少量ずつ、シロップ混ぜる。固めのメレンゲが出来たら、黄身の方へ、3割程度のメレンゲを入れよく混ぜ、残りは泡を潰さないように、切るように混ぜる。



 これで、生地の完成だ。生前、ベーキングパウダーを切らした時にやっていた手法だ。それなりにうまいはずだ。



 総長殿は食い入るように見ている。正直怖い。



 後は弱火で焼けば完成だ。



「これで完成です。これにシロップをかけても良いですし、その辺はお好みで」



 この世界の粉物は基本美味くない、食えなくは無いが残念だ。こんな適当な作り方を教えただけでも、十分役に立つだろう。



 一心不乱に食べる総長は鬼気迫るモノがあった。



 食べ終えるとするとただ一言「うまい」そう言って、自分で作りに行ってしまった。



 やる事はまだあるし、今は放置でいいだろう。




 それから、挨拶まわりやら、拠点の撤去における最終確認やら、そろそろ昼になる頃に総長殿はやってきた。ある程度マスターできたのであろう。簡単だしな。




 後は、昨日の時点で事前に書いていたレシピを渡せば、納品完了だ。



「素晴しい料理をありがとう。今回は私の個人的な取引なので、前回の様には出せないのが心苦しいが受け取ってくれ」



 そういって、袋を差し出してきた。かなり重い、中身は金貨。相変わらず羽振りが良いことで。



「確かにいただきました。そろそろ出るので、申し訳ないですが、おれはこの辺で失礼します」



「今回も、良い取引が出来た。できればまた、頼むよ」




 こうして、彼と別れた。

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