第81話総長
本当に、疲れた。精神的に、村長の家を出て、拠点に戻ろうとすると、小柄の少年とも青年とも言いがたい微妙な男が立っていた。息は荒く、正直近寄りたくない。
「貴方がダイスさんですか?」そういう奴に限って、絡んで来るのがこの世界。おい、自称神、なにか呪いをかけてないだろうな?悪縁の呪い的なのを。
いえ、違いますよと言いたいのをぐっと押さえて 「そうですが何か御用でしょうか?」
「聞きましたよ、隣の国に行かれるのでしょう? ああ、申し送れました。私は、ギルド総合長のアークと申します」
ガウの上司か、にしては若い、こいつもミルと同じ部類なのだろう。
「色々お話したかったのですが、明日出立となればあまり時間は無いでしょう。なので今回は商談の話だけをしようと思います」
ああ、そういえば自腹で買取金額を追加した奴か・・・よほど食道楽なのだろう。
「売って欲しいのは、シロップを使った美味しい物のレシピです」
やはりか、色々あるが・・・ここで確認するのもいいだろう。材料がどの程度手に入るか次第だしな。
「その前に、食用の卵って手に入りますか?」
「食用の卵ですか、可能ですよ。それなりに高価ですが、ランナーバードの大きな物と、従魔契約した、闘鶏の卵がそれですね」
鶏がいるのか? いや、どうせ名前だけで違う可能性もあるな。
「では、レシピと共に調理器具とのセットでお売りする、というのは如何でしょう?」
「調理道具とは? いや、いいでしょう。値段は話を聞いてからにしますが、買い取りましょう」
「これですね」
作っていた泡立て器を取り出して、アークに見せる。
「これは、なんに使うのでしょう?」
「これは、泡立て器、生地なんかを混ぜる時に使う」
興味深そうにそれを手に取り、見ている。
「卵があれば、良かったのですが・・・口頭で説明するしかありませんね」
そう言う俺を手で止め 「この村を出るのは明日の昼頃でしたよね?」
「そうですね、朝はゆっくりして、昼から出るつもりです」
「それは良かった、それでは、朝までに卵を用意します。その後でレシピを教えてください」
今から? 町までは相当な距離があるはず。まさか、今から狩りに・・・ないよな?
「それでは、また、朝にお会いしましょう」
物凄い速さで去っていった。まぁ、害はないだろう。
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