第60話あっけない幕切れ

 薄々感づいてはいたのだ。最早この力は、洒落で済むものでは、なくなっていると。最近は同時起動が当たり前になっていた、鑑定、数の理、イカサマだったはずだが、最近、戦闘においては、鑑定で見る必要もなく、ステータス、レベル、スキルレベル、の±3が可能になっている。



 そして、MPを使わないので制限が無い。これが戦場で意味する事は、俺がいるだけで戦況を左右するほどの補助魔術と言って過言ではないだろう。



 前の愚かな勇者よろしく、スキルレベル3以下の者はそのスキルが無と化し、それ以外でも大幅に低下する。



 更に、目の前の侵略者達にはレベル、ステータス全てマイナス3された上、全ての指の重量が3キロ程増加している。かなり引き付けてから起動したので、最早逃げる事すら困難だろう。



 逆にこちらのエルフ達は、元々弓術と魔術に優れた種族。イカサマで弄り金級にも届く程の長弓兵と化す。



 少し問題があるとすれば、エルフ達は、あまりの調子の良さに困惑したくらいだろうか?


 エルフが一つ弓を放つ度、命が一つ消えていく。最早、篭城戦のはずが、掃討戦になりつつある。



 準備にあれだけ掛けた戦は、なんと3時間くらいで終わってしまった。当然ながら、事後処理の掃除の方が大変だったのは言うまでもない。



「ダイス、少し話がある、来い」リュートだ。黙ってついて行く事にしよう。



「今回の戦、お前のお陰なのは分かっている」



 リュートの部屋に連れて行かれる。 「やはりあの時の人攫いとやった時もこれを使ったのか?」



「前にも言ったじゃないですか、他人の身体能力を上げ下げ出来ると。それだけですよ」



「自軍全てと、敵軍全て、同時にか?それは最早人の所業ではない」


「だから、詳しくは話さなかったし、当時はここまで使えなかった。悪いがこの事は黙ってて貰えないですか」




 リュートはもう、誤魔化し様が無い。ならばある程度事実を開示するのが得策のはずだ。しかし、他のエルフ達は、俺の仕業だとは思ってないはず。ならばここで口止めをするのが、一番だろう。



「己が誉れを投げ捨てると言うのか?間違いなく、英雄として受け入れられる所業をしておきながら」



「俺自身が強い訳では無い。もしも、この事が周知されれば、俺の命は長くないと思って良いだろう。あの町を逃げ出したのも、オーガを狩り過ぎて、俺が表に出たのが理由だしな」


「分かった。この事は私の心に仕舞うとしよう。他の皆に変わって深く感謝する」


 相変わらず、固い人だ。俺は手を振って部屋を出た。




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