第50話イメージは崩れるもの
イメージなんていうもんは、所詮書き手の匙加減一つ。前世でのテレビに新聞諸々、手前の都合が良いように、あるいは面白おかしく、あたかも真実であるかのように書く。これは前世も今世も変わらないようだ。
無論、エルフは人間に基本的には、良い感情は無い。当然だろう。彼らにすれば人攫いの蛮族だ。無論それだけじゃない事くらい理解はしているだろうが。
そして、滞在の件だが、拍子抜けするくらい簡単に許可が出た。それどころか村人に会えば、感謝を述べられるくらいだ。
「リュートさんよ、これはどういう状況なんだ? 人間はあまり歓迎される存在じゃ無いと思うのだが?」
「ああ、その通りだ。だが、お前だけは別さ、お前の話は村中に広まっている。お嬢様が広げちまったからな。私が手も足も出ない奴を、危険に身を晒してまで、救った。それだけで信頼には十分だよ」
ここでの俺の評判は、無駄に高いようだ。
「ほれ、お前が来たと聞いて、お嬢様が来た。人見知りだから、優しく接してやってくれ」
当然だろう、今の話で彼女が、どれだけここでの影響力を持っているかは分かる。それを雑にあつかえるか。
パタパタと擬音でも立てていそうな、可愛らし走り方でこちらに件のお嬢様が走ってくる。相変わらず可愛らしい。俺が親だったら、親ばか確定だ・・・親になるどころか、作る行為すらあまり経験がないが。嫁を欲しいとはあまり思わなかったが、子供は育てるだけの甲斐性があれば、欲しかったな。
こんな世界じゃ、全く思えないが。
「こここ・・・」
「こここ?」
「ここここっ、こんにちは」
「はい、こんにちは。久しぶりだね、元気にしてたかい?」
「あ、あの時は、本当にありがとうございました」
「それは、前に聞いたよ。それに、俺より感謝すべきは、リュートだ。そいつを間違っちゃいけない」
そう、言い終えた時、後ろから急に声がした。
「いいねーかっくいーねー。俺もそういう台詞を吐きたいもんだ」
さっきまで誰もいなかったはずなのに、そこには美形エルフ・・・だいたいどれも美形なんだが・・・
「娘を救ってくれたんだろう? 心から感謝するよ。この村に滞在するんだろ? しかも鉄を扱えると来た。いっそこの村に骨を埋めてくれてもいいくらいだ。よろしくな、ダイス殿」
どうやらこの村の長らしい、なんだかギルド長を若くしたような・・・彼は結構良い飲み相手だったな。この人も同じであるといいんだがなぁ。
なんだかんだで、あの町も気に入ってたようだ。
簡単にこの村での掟を聞き、後は自由にどうぞと、地上の工房と家を一つ貸してくれた。
なるようにしかならない。気楽にやっていくとしようか。
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