第51話離脱

 私は今王宮の大広間にいる。オーガ討伐の功労者としてだ。しかし、実際は見ていただけ。王は既にその事実を御存知なはず。なのに何故このような事を?


 そんな事を考えていると、前に出ろと指示が出た。王の前に向うと、凄まじい人数の貴族の視線がある中彼はこう言った。



「リムとそのパーティーの兵達よ、この度は良くオーガを仕留めてくれた。もし、あそこでそなたらが仕留めていなければ、数百の将兵が命を落としただろう。最も貢献したダイスという男がいないのは残念だが、そなたらにラインの称号を与えよう」



 おお!と歓声のような物が周囲から漏れる。ラインとは1代限りの領地の無い貴族だ。名誉職と言うやつね。




 あとは、大きな社交会があったくらい。私には興味はなかった。これは私の名誉じゃない、彼の、ダイスの物だ。忌々しい。




 この後王に呼ばれている。どうせ、内容はこうだ。ダイスを探せ。



 時は少し戻り




 オーガ討伐後、別れた後、1日明けて父さんに怒られた。



「お前の信用が無くなる程度なら、自己責任だから構わない。だが、私の信用まで無くしてしまった。友を一人失ってしまったよ。自分の行いが如何に浅はかか思い知ったよ。君なんかに任せるんじゃなかった」



 その目は怒り等無く、寂しさや落胆の色が見えた。私は腹が立った。なぜ自分の武勇を誇らない人間に、誇る機会を与えただけなのに。こんな扱いを父さんから受けなきゃならない。



 文句を言おうと店にメンバーを集めて向かった。どうぜ荷物があるから、取りに行かなければならないし。



 呼ぼうが、ドアを叩こうが、返事は一切帰ってこない。私はメンバーが止めるのを無視して、ドアを蹴破って店に入った。



 中は私達の部屋を除いて空っぽ。昨日の時点でいなかったのだろう。



「私がそんなに悪い?武勇を誇る事はそんなに罪深いの?」



「俺は姐さんが悪いとは思わないぜ、隠す理由なんてないからな」ガイは同じ気持ちのようだ。



「怒って当然でしょ?僕なら彼ほどじゃなくても、怒るでしょうね」



「どういう事よ、私が悪いって言いたい訳?」




「全くもってその通りですね。少し考えてもみてください。ダイスさんのあの魔術、どう考えても普通じゃない。オリジナル、もしくは一族の秘術とか、普通なら表に出ない代物ですからね。それを僕達の前では使った。これは信頼ですよね?ギアスがあるから内容は僕らには話せません。しかし、あれだけのオーガを倒す人間ともなれば、何かあると探りに来るでしょうね」



「まぁ軍は絶対に見逃さないよね」ミルは当然と言わんばかりに言い放つ。



「後、勝手な想像ですが、あんな恐ろしい魔術が広まったら、戦争は変わりますよ。ダイスさんは有用性も考えていたんですから、逆にリスクを考えない訳がない。そう考えれば僕達をギアスで縛るのも納得ですね。大体さ何一人で決めてくれてるんですかね?少なくてもリムとガイ以外は納得してないですよ」



 この時点でこのパーティーは終わってたのかもしれない。



 城から帰る途中。



「リムさん、お世話になりました。僕、ミル、レイナはこのパーティーを脱退します。この件はギルド長も御存知です。僕達は貴方達とは別にダイスさんを探します。それではお元気で」



 ミルもレイナも頭を下げ、離れていく。私とガイは呆然と見送るしかなかった。

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