第48話渡りに船

 「また、振り出しにもどったな」一人愚痴る。そう、また良くわからない、森の中だ。前回との違いは、空間庫の中に大量の物資と食料がある事。餓える事は無い。



 問題は、関所を通らず国を出るために、森に入ったは良いが、終わりが見えない事だ。一応方位磁石は準備したので、一定方向には進んでるはずだ。既に4日歩いている。睡眠は木の上でなんとかハンモックもどきでしのいでいるが、まともな睡眠等、取れるわけも無く、かなりしんどい。




 魔物も当然闊歩している訳で、襲撃も頻繁だ。特に脚の早い犬系統の魔物には苦労した。囲んで襲ってくる上、速い。マシンガン無しでは、切り抜けられなかっただろう。



 4日目も終盤、暗くなってきた。寝床に良い高い木を探さなければならない。



 丁度良い木を見つけ、手を掛けた瞬間。足元に矢が飛んできた。



「ここは、我々エルフの領地。早々に立ち去れ」



 いつのまにか、エルフの領地に、入り込んでいたらしい。イメージ通り排他的な種族なのだろうか?



「エルフの領地でしたか。知らずとはいえ、申し訳なかった。俺はアズールへ向っているのだが、領地を避けていくにはどうすれば良いだろうか?」


 話を聞く気はあるようなので、これで切り抜けられるはず・・・だと思いたい。戦った場合、何処にいるかも分からない相手は正直きつい。鑑定が入らないからな。



「迷い人か。良いだろう、腕を上に上げろ。」


 正直に従う。すると目の前にエルフが下りてきた。どうやら何かしらのスキルのようだ。



「黒髪黒目・・・貴様名前は?」



「ダイスですが何か」


 名乗った瞬間、エルフが明らかに動揺した。



「俺の名前はおかしいでしょうか?」




「いえ、貴方はお嬢様を危機から救って頂いたとリュートから聞いております。先ほどの無礼はどうかお許しを」




「迷い込んだとはいえ、勝手に入ったのは事実です。無礼でも何でもありませんよ」



「そう言って頂けると助かります。よろしければ、村に来ませんか?かなり疲弊されてるように、見受けられます」



 渡りに船とはこの事だ。体力的にもいい加減、まともな場所での休息が欲しかった。



「助かります、正直、野宿続きで、まともに寝れてないんですよ」



「森をソロで行くのは、かなり無理がありますよ。良くここまで来れましたね」




 そうして俺は村へ案内されていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る