第40話レシピの価値は?

「思ったよりかなり早いな、伝達時間もかかるだろうに」



「総長殿は美食家でもあってね、自分で食材を取りに行く程の、拘りがあるタイプだ。お陰で周りは振り回されているんだが」



 ギルド長の顔が、何かを思い出すように、げんなりしている。



「ギルド長、心中お察しする」



「君は良い子だね。本当に大変なんだ。所で今更だが、ギルド長とか余所余所しくないかい?」



 そんな事を言われても困る。名前を知らないのだから。



「そもそも、ギルド長は俺に名乗った事は無いと思うのだが」




「それはいけない。すまないね、どうにも名乗る事を忘れがちでね。僕の名前はガウェイン、ガウとでも呼んでくれ。後、脱線してしまったが、今回事が早かったのは、君のパンや酒を、総長が食べたからさ」



「ガウェインね、大それた名前だ。ガウと呼ばせてもらおう。美食家の総長殿に気に入って頂けたって事でいいのか?」



「僕の名前は普通だと思うんだが、何か曰くでもあるのかい? それと総長は気に入りすぎて、金額を提示した後、勝手に休暇を取って、勝手に行方不明だ。多分既に何度か君の店に、変装して来てると思うよ」




 総長、フリーダムすぎるんじゃないか?



「名前ね、俺の知る物語の中で、人気の騎士と同じ名前ってだけさ。それで結局いくらなんだ」



「僕が騎士様と同じ名前ね、そう聞くと似合わないな。金貨3000枚だそうだ」



 感覚的だが、金の価値は元の世界の4割弱って所だ。それでもこの世界の金貨1枚の価値は5万程度あると思う。確か中世での価値は12万くらいだったか? 物価から適当に計算したから、まだ価値が低い可能性もあるが、3000枚って・・・



「喜んで良いのか、これは?凄い額だよな?」



「確かに正気じゃないね、どんなに出しても金貨500枚が限界だと思うよ。実際500枚の予定だったし」



「じゃあ何故3000枚に?」



「総長が自費で2500枚追加しただけさ」



 総長・・・すげーな。他に感想が出ない。




「で?この件は成立でいいかね?ダイス君。」



「この条件で蹴れる奴を見てみたい。よろしく頼む」



「全くだ。ちなみに成立したら、総長から伝言をしろと言われていてね」



「素晴しい料理です。今回の様な金額は出せませんが、他に素晴しい料理を開発したら、是非ギルド、もしくは私にお売り下さい。だそうです」



 金貨2500枚の意味が分かった気がする。



 それから契約書にサインして、店に戻るとすぐに、ガウが酒を飲みに来ていた。外はまだ明るい。



 ギルドの重役はフリーダム。


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