第39話ギアス(契約魔術)

 ギルドに着くと、最早、顔パス状態で通り抜ける事が出来る。護衛の二人にはここまでで良いと伝えると、「お腹すいた、ご飯行こうよ」とミルがガイを引っ張って行ってしまった。気分を取り直し、部屋に入ると彼はいた。



「やぁ、領主様と一緒かい? 君は隅に置けないねぇ。で? 何事だい?」


 俺は領主にこう命令した。



「首輪を見せ、こうなった経緯を一切の嘘偽り無く、客観的に話せ」



 すると領主は、苦しそうに話し出した。これは命令に逆らいたいが、出来ない事から生じるストレス性の何かではないだろうか?



「成る程、領主殿はもう少し、高潔な部類の人間だと思っていたよ。残念だ、所でこの話を何故僕に持って来たんだい?信頼してもらえるのは嬉しいけど、意図が読めないな」



 嘘を付け、分かってる顔しやがって。



「ギアス」そう短く言った。



 領主は今更何が起こるか気付いたようだ。今更どうにもならないがね。



「成る程、確かに良い提案だ。第三者である僕がいれば公平性がある、ギアス(魔術契約)ができる訳だし。この町で行使できる数少ない、人間でもある訳だ。良いだろう、君の案を聞こうか」



 こちらの制約は隷属の首輪の解除、及び、今回の事件を口外しない。



 対して、あちらの制約は、俺に金輪際関わらない、悪意があるなしに不利となる行動を取らない。これらは他者を使う事も含まれる。俺の事を秘匿する事である。



「随分生温い制約ではあるが、これで良いんだね?」


「問題ありません」と答えると「欲が無い子だ」と呆れ顔で契約術式を組んでくれた。



 契約を終わらせ、首輪を外す。


「領主様には、職員に館まで送り届けてもらうとするよ」


「結構ですわ、これ以上迷惑はかけられませんもの。それに、ハンスならもう近くまで来ているはず」



 そう言って外見る領主、釣られて俺も外を見ると、いた。ハンスだ、部屋を見て察したのであろう。


「私はこれにて失礼させてもらいますわ」


 そういって退出した。


これで、ようやく問題の一つが解決した。似たような連中も公式にギルドとの話が済めば、問題なくなるであろう。



「ああ、そうそう。ダイス君、酒とパンの技術に対する対価が決まったそうだ」


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